判例・事例

ソフトウェア開発委託契約書作成の際の注意すべきポイント

2011年12月15日 知的財産権:特許・実用新案・意匠・商標・著作権・不正競争防止法


 プログラム開発において、開発を外注する場合、ソフトウェア開発委託契約
を結ぶことになりますが、契約書には、プログラムの著作権(著作権法上、プ
ログラムも著作物として保護の対象となります。)や特許権に関する条項を適
切に定めておかなければなりません。仮に、プログラムの開発を注文する企業
をA社、受注企業をB社として、ソフトウェア開発委託契約におけるポイントを
ご紹介します。
   
   (発 注)
     →  
A社       B社
     ←

(著作権や特許権の譲渡) 

1 著作権に関する条項
 著作権については、著作権を譲渡する(B社の著作権をA社に譲渡する)場合
と、著作物の利用許諾を与える(B社がA社に当該プログラムの利用を許諾する)
場合とがあります。

(1) 著作権の譲渡
 まず、著作権を譲渡する場合、A社は、当該プログラムを自由に利用すること
ができ、再譲渡することも可能です。他方、B社は原則として譲渡したプログラ
ムを利用することができなくなります。
 また、様々な権利の集合体として捉えられている著作権には、①財産的権利と
しての著作(財産)権のほか、②人格的権利としての著作者人格権とがあります
が、後者については譲渡することができません(同法59条)。
 この著作者人格権もいくつかの権利の集合体として捉えられているのですが、
その中でも、同一性保持権、すなわち、著作者が自己の著作物とその題号につき、
意に反して変更、切除その他の改変を受けないという権利(同法20条)を適切
に処理しておくことがソフトウェア開発委託契約においては重要となります。つ
まり、著作権法上、プログラムの著作物については「必要な改変」をすることが
認められているのですが、プログラムの改変が行われた場合に、当該改変が必要
な改変なのかどうかで争いが生じることを避けるため、そもそも同一性保持権を
含む著作者人格権の不行使条項を定めておく必要があるのです。

(2) 著作権の利用許諾
 次に、B社がA社に対しプログラムの利用を許諾する場合、いくつかのパターン
があります。
 例えば、A社がプログラムを改変して利用することを予定している場合には、プ
ログラムを改変して利用できる旨の規定が必要となりますし、第三者に利用させ
ることを予定している場合には、A社から第三者に再利用許諾できる旨の規定が
必要となります。さらに、A社としては、B社がA社以外の者に当該プログラムの
利用許諾をしてもらっては困るというような場合には、A社に対して独占的利用
許諾を認める旨の規定が必要となります。

2 特許権に関する条項
 プログラムの特許については、特許を受けうる権利は、原則として開発者たる
B社が取得します。そこで、A社が当該プログラムを利用したり譲渡したりするた
めには、①B社から特許受けうる権利を譲渡してもらうか、②B社が出願して取得
した特許権を譲渡してもらうか、③B社が出願して取得した特許権についてライセ
ンス(実施権)を設定してもらうか、いずれかの合意をしておく必要があります。

3 このようにソフトウェア開発委託契約書の作成には、権利関係の処理に関し
ていくつか注意すべきポイントがあります。当事務所では、著作物、特許、商標
等の知的財産に関する契約書の作成も随時行っておりますので、お気軽にご相談
ください。

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