判例・事例

「パワハラ」に関する最近の裁判例②

2016年3月1日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


3 暁産業ほか事件(福井地判平26・11・28)

【事案の概要】

高卒の新入社員Aが、入社の約8か月後に自殺したことから、Aの両親がAの直属の上司Yら及び会社に対し損害賠償を求めた事案。Aの手帳の記載から、Yが次のような言葉又はこれに類する言葉を投げかけたことが認定された。

「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」「詐欺と同じ、3万円を泥棒したのと同じ」「毎日同じことを言う身にもなれ」「聞き間違いが多すぎる」「嘘をつくような奴に点検をまかせられるわけがない」「人の話をきかずに行動、動きがのろい」「相手をするだけ時間の無駄」「指示が全く聞けない、そんなことを直さないで信用できるか。」「何で自分が怒られているかすら分かっていない」「嘘を平気でつく、そんなやつ会社に要るか」「会社を辞めた方が皆のためになるんじゃないか、辞めてもどうせ再就職はできないだろ、…どうせ働きたくないんだろう」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」

【裁判所の判断】

これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Aの人格を否定し、脅迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントと言わざるを得ず、不法行為に当たる。

→YのAに対する不法行為は、外形上はAの上司としての業務上の指導としてなされたものであるから、会社も使用者責任(民法715条1項)を負う。(賠償額:合計7261万2557円

【教訓】

同じ言葉であっても、相手の属性(若年の新入社員等)に応じ、より厳しく判断され得ることに注意する必要があります(ただし、本件で問題となった「詐欺と同じ」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」等の発言は、たとえ経験豊かな部下に対するものであっても、パワーハラスメントに該当すると思われます)。

 

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