判例・事例

パワハラ~その2~裁判例の紹介(2)

2012年4月28日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


パワハラにつき、会社の責任を認めた裁判例をもう1つご紹介したいと思います。

広島高裁松江支判H21.5.22

1 事案の概容

 有期雇用の準社員として勤務していたXが、人事課長が面談の席で自分を大声で罵倒したこと等が不法行為に当たるとして、人事課長らに対しては民法709条に基づき、会社に対しては民法715条に基づき損害賠償請求を行った事案。

2 裁判所の判断

 裁判所は、人事課長が当該面談の席で、Xに対し、

「あなたがやっていることは犯罪なんだぜ。」

「前回のことといい、今回のことといい、全体の秩序を乱すような者は要らん。うちは。一切要らん。」

「自分がやっていることを隠しておいて、何が裁判所だ。とぼけんなよ、本当に。俺は、絶対許さんぞ。」

「会社がやっていることに対して妨害し。辞めてもらう、そのときは。そういう気持ちで、もう不用意な言動は一切しないでくれ。わかっているのか。わかっているのかって聞いているだろう。」

などと大きな声で叱責したことを認定した上で、

同課長の言動は、

ⅰ Xが同僚を中傷する発言を行っていたことにつき、その発言を直接聞いた社員からも確認がとれているにもかかわらず、二度にわたる面談でもこれを否定するなど、依然として反省の態度が見られないこと、

ⅱ 従業員の出向については労使間の協議を経て、従業員の雇用確保のために会社がとった施策であるにもかかわらず、労使間のルールを無視して会社の 役員に直接電話をかけ、かつ、脅迫的なことばを用いて妨害・中止させようとしたことについて、従業員として不相当な行為であるから注意、指導する必要があると考えたこと

によるものであり、

企業の人事担当者が問題行動を起こした従業員に対する適切な注意、指導のために行った面談であって、その目的は正当であるといえるが、

同課長が、大きな声を出し、 Xの人間性を否定するかのような不相当な表現を用いてXを叱責した点については、従業員に対する注意、指導として社会通念上許容される範囲を超えているものであり、Xに対する不法行為を構成するというべきである

として、同課長と会社に不法行為(それぞれ民法709条、715条)に基づく損害賠償責任を認めました。

(ただし、Xが面談中に秘密裡に録音を行い、ふて腐れ横を向くなどの態度をとり続けたことなどが同課長の言動を誘発したなどの経緯からすれば賠償額は相当低額で足りるとして、慰謝料の額は10万円とするのが相当であるとされました。Cf.原審は300万円の支払いを命じていました。)

 

パワハラ~その3~評価

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