判例・事例

改正障害者雇用促進法の施行(平成28年4月1日)と実務上の問題(1)

2016年2月7日 その他の事例・判例


1 改正障害者雇用促進法

改正障害者雇用促進法のうち障害者に対する差別禁止(同法34条、35条)、合理的配慮義務(同法36条の2,36条の3)に関する規定が、平成28年4月1日から施行される。

(1)差別禁止の内容は、募集、採用についての差別禁止(34条)、賃金その他の待遇についての差別禁止(35条)からなり、

(2)合理的配慮義務は、募集、採用についての合理的配慮(36条の2)、採用後の待遇や特性に応じた援助等の合理的配慮からなる。

そして、ここにいう障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害等をいい、精神障害には発達障害を含むとされている(同法2条1号)。

従来、障害者差別解消法においては、民間事業主の合理的配慮は努力義務にとどまっていた(同法8条)が、障害者雇用促進法36条の2,36条の3は、「障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。」として、合理的配慮を義務としている。ただし、事業主に対し過重な負担を及ぼす場合は除かれる。

違反をした場合には、行政の助言、指導、勧告の対象となる(36条の6)

2 改正障害者雇用促進法施行に際し、予想される問題

改正法は、従来の障害者の法定雇用率の達成による雇用促進というアプローチから、差別禁止法的性格を強める改正内容だ。障害者基本法の「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有する・・個人として尊重される」という理念のもと、雇用の分野で障害者の社会参加を促進し、「全員参加型社会」を目指そうというものだ。

理念と方向性は理解できる。しかし、その具体的な適用においては、以下のような問題が指摘されている。

(1)対象となる障害者は、障害者手帳所有者に限定されない(雇用率制度は、手帳所有者を対象とする)が、事業主は当該労働者が改正法の適用対象者か否かをどのように判断すればよいのか。

法は、「(障害があるため)長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。」としており、障害の程度が軽く、職業生活への制限が軽微な者は含まれないこととなる。

ただし、後に触れるように、もし合理的配慮が提供されなかったために、事故や障害の程度の悪化が発生した場合に安全配慮義務違反の責任が生じる点を考慮すれば、ある程度広く障害者の範囲をとらえておいた方がよかろう。

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