判例・事例

改正障害者雇用促進法といわゆる問題社員のはざま(2)

2016年2月15日 その他の事例・判例


パーソナリティー障害とまではいえないが、次のような事件も経験した

【あるアスペルガー症候群の社員の例】

ある社員を人材バンクの紹介で、試験の成績や職務経歴書も素晴らしい内容なので、幹部社員として実際に採用したのだが、部下を指導できないだけでなく、部下や周りの社員と信頼関係を形成することができず、協調して仕事をすることができない。キツイ話し方や、態度、日常の服装のだらしなさ、奇行といってもよい行動を、何度注意しても改めない。

ひとつひとつ取り上げると大したことではないと思われるかもしれないが、それが、極端で、何度注意しても改まらないので、部下の信頼を失ってしまった。総務部長として採用したのだが 、とてもその任に耐えないことは明らかだった。また、基本的な事務処理もミスが多く、他に配置する業務もなかった。  やむを得ず退職を勧奨することにしたのだが、上司が本人と話しをしたときに、本人は実は自分はアスペルガー症候群であることを告白した。

上司が、本人と話し合いを重ねる中で、最終的には、退職一時金を支払い、退職をしてもらった。担当上司(取締役)は、アドバイスもよく聞いてくれ、丁寧に対応してくれたと思う。

総務の幹部社員として採用した社員であり、仮に配転の現実的可能性を検討するとしても、社員数数十名の中小企業ではそれは限界があり、退職してもらったのはやむを得なかったと思っている。

一口に発達障害といっても、その症状、程度は個人差があり、会社の側がアスペルガー症候群の社員に対する対応に習熟していれば(あるいは対応の仕方をアドバイス、援助してくれる機関が存在すれば)、その個性を生かしながら共に働く社員として受け入れることができる例も多いと思う。

改正障害者雇用促進法では、合理的配慮指針を定める等して企業の障害者受入をサポートしようとしているが、まだまだ一般的、抽象的な内容が多く、実践を踏まえた事例集の提供、援助機関の充実と周知など一層の充実したサポートが望まれる。

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