判例・事例

改正障害者雇用促進法といわゆる問題社員のはざま(3)

2016年2月15日 その他の事例・判例


【日本電気事件  東京地裁平成27729日判決】

(1)この判決は、アスペルガー症候群と診断された原告について、主治医は、就労可能と診断していたが、復職の要件を片山組事件最高裁判決及び有力な学説に従って検討し、休職期間満了時において復職の要件を満たさず、自然退職は有効とした判決だ。

また、本判決は、原告の主張していた障害者基本法、発達障碍者支援法、改正障害者雇用促進法の趣旨(平成28年4月1日施行。当時は、まだ未施行)についても検討し、前者2法で規定する義務は努力義務であり、改正障害者雇用促進法は労働契約の内容を逸脱する過度な負担を伴う配慮の提供義務を事業主に課するものではないとして、原告は就労可能とは認め難いとしている点でも注目される。

(2)復職の要件に関する判断で注目すべき点のみを指摘すれば、判決は、労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った労務提供があると解するのが相当(前記片山組事件最高裁判決)であり、復職の要件を満たすとしたうえで、原告と被告の労働契約は、職種は総合職であり、休職命令発令時の職位はA職群3級であったから、復職の要件を満たすには、被告の総合職の3級としての債務の本旨に従った労務の提供といえることが必要であるとした点である。

そして、休職期間満了時、原告が、その病状からして、総合職として配置される現実的可能性があると認められる他の業務があったということはできないとして、復職の要件は満たさないとした。

ここでは、判決の詳細は省略するが、「当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務」の範囲が当該労働契約の内容を離れて広く解される傾向が見られた中で注目すべき判決と思う。

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