判例・事例

個人事業主は労働者?(残された重要な問題)

2015年6月1日 労働組合に関する事例・判例


最高裁の考え方
団体交渉に応じる義務の意味

5 残された重要な問題(業務委託契約の終了、ストライキ等に関する問題)

個人事業主を労組法上の労働者と認めるということの意味は、団体交渉に応じる義務を負うだけではなく、例えば、契約を終了させることが、労組に加入していることを理由とする「不利益取扱い」(労組法7条1号)の不当労働行為にあたり無効とされたり、個人事業主がストライキ等の争議行為を行った場合に、民事免責をされ委託者は損害賠償請求できない(労組法8条)といった効果をもたらす可能性があるということだ。

現実に、上記新国立劇場運営財団事件では、合唱団員が別訴において契約の終了は不利益取り扱いに当たるとして無効を主張した(当該事件については、不利益取り扱いには当たらないとして認められなかった。)

法律上はこのような問題も生じ得るということだ。

6 当事務所の経験したある事件

当事務所でも、ある顧問会社の下請けの個人事業主が労組を結成して団交を申し入れてくるとともに、その要求を受け入れない場合にはストライキをすると通告してきた事件を担当したことがある。

その事件では、個人事業主は労組法上の労働者には当たらないと判断し、仮にストライキを行った場合には、債務不履行により契約を解除するとともに損害賠償請求も辞さないことを通告したところ、ストライキ通告は撤回した。その後、団体交渉ではなく下請事業主との話し合いという形で問題は話し合い解決した。

7 個人事業主に対し、労働基準法、労災補償法等の保護は及ぶか

個人事業主については、以上に述べた労組法上の問題以外にも、労働時間や賃金(特に割増賃金)、有給休暇等に関する労基法上の規制は及ぶのか、労災補償法による保護は及ぶのかといった難しい問題がある。 (詳細は、有斐閣「労働者像の多様化と労働法・社会保障法」325頁以下(吉田肇執筆)を参照。)

 

 

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