判例・事例

業務委託により講師を受入れていた私立高校に団交命令②

2015年6月8日 労働組合に関する事例・判例


3 県労委の判断について

命令書によると、県労委は、受託業者と講師の間の関係について、一定の支配関係はあるが、雇用契約は成立していないとしました。労働時間にかかわらず一定額の報酬が支払われていたことや、受託業者は一般労働者派遣事業の許可を得ており、雇用契約と業務委託契約の違いは認識していたにもかかわらず、あえて業務委託契約を結んでいること等を重視しています。 もし受託業者と講師の関係が労働契約としての実態を備えていないとすれば、本件を労働者派遣に当たらず、違法な労働者供給に当たるとする県労委の判断は相当というべきでしょう。 そうであれば、朝日放送事件最高裁平成7年2月28日判決の法理にしたがい、講師の受入先である高校が労組法上の使用者に当たるか否かが判断されることになります(なお、県労委は、前提として、講師は形式上業務委託契約を結んでいたものの、独立した個人事業主には当たらず労組法上の労働者に当たるとしています)。県労委の認定するように、高校が、講師の基本的な労働諸条件の決定にとどまらず、採用、配置、雇用の継続、終了につき、具体的かつ現実的に支配、決定できる地位にあったとすれば、高校は労組法上の使用者と判断されてもやむを得ないと思います。

 

4 直接の雇用関係は認められるか~黙示の労働契約の成否

ただし、団体交渉に応じる義務にとどまらず、高校と講師の間の直接雇用契約関係を認めるには、黙示の労働契約が成立する必要があります。この点については、リーディングケースとしてパナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件 最高裁二小平21.12.18判決がありますが、ハードルはかなり高いと思います。 しかし、県労委が認定したように、高校は、採用、配置、雇用の継続、終了につき、具体的かつ現実的に支配、決定できる地位にあったと裁判所も認定すれば、かなり微妙な事案になる可能性があります。ただし、県労委の判断でも、高校は、講師の報酬額については、具体的現実的に支配決定する地位にはなかった(受託業者が決定していた)とされているので、この点は黙示の労働契約成立を否定する要素になります。 現在、地裁で講師の高校に対する地位確認請求事件が係属しているようですので、結論が注目されます。

 

※ 「使用者の方々へ」続きます。

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