判例・事例

団体交渉の拒否

2012年4月20日 労働組合に関する事例・判例


 労働組合法7条は、使用者が団体交渉の申込みを受けた場合、正当な理由がなく拒否すると不当労働行為となるとしています。
 それでは、どのような場合に不当労働行為となるのでしょうか。

 まず、使用者が処分権限を有しない事項について団体交渉を拒否しても、不当労働行為とはなりません。
 例えば、単なる政治的な要求や、使用者と関係ない事項は、使用者が処分権限を有しない事項であり、団体交渉の対象となりません。

 また、団体交渉は、労働条件について交渉することや労働協約を締結することを目的としていますので、そうした事項と関係のない事項については、団体交渉を拒否しても、不当労働行為とはなりません。
 例えば、労働条件や人事管理に関する事項は団体交渉の対象となりますが、経営の基本方針といった経営管理にかかわる事項は、労働条件等に影響がない限り、団体交渉の対象になりません。

 その他、組合活動に関する便宜供与といった労働組合の団体的活動に関する事項や、労働協約の所定事項についても団体交渉の対象になります。

 もっとも、団体交渉の対象になる事項について団体交渉を拒否した場合にも、正当な理由があれば、不当労働行為とはなりません。
 ただし、労働委員会で問題となっている事例のほとんどでは、正当理由はないとされています。
 具体的には、組合交渉員が威嚇を行い、暴力・暴言を続ける場合や、毎月5回ないし10回といった業務に支障が生じるような場合、弁護士に依頼したところ、その弁護士の予定が合わなかった場合といった事情がない限り、正当な理由は認められにくいでしょう。

 なお、団体交渉では、36協定を結ばずに残業をさせているといったような使用者に違法状態の是正の義務がある事項だけでなく、チェックオフの実施といった使用者に是正の義務がない事項についても交渉を要求される場合があります。
 前者について誠実に交渉し、その是正に努めるべきであるのは当然ですが、後者についても、是正するかどうかはともかく、使用者としては、誠実に対応する義務があります。

PAGE TOP