同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 ~長澤運輸事件のご紹介~①
2016年6月20日 労働条件に関する事例・判例
1 はじめに
みなさん、労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)を知っていますか。平成25年4月1日より施行されている新しいルールで、有期労働者(契約社員、パート、アルバイト等)について、期間の定めがあることを理由に正社員と異なる労働条件とする場合には、その相違は不合理と認められるものであってはならないというものです。
今、給与、賞与、退職金など正社員と有期労働者で異なる扱いがされている労働条件につき、この条文に違反すると争われる例が増えてきています。前回の事務所通信でも簡単にお知らせしましたが、本年5月13日には、東京地裁において長澤運輸事件という、この条文に関する非常に重要な判決が出ましたので、今回はその内容を詳しくご紹介したいと思います。
2 事案の概要
輸送事業会社であるY社を定年退職した後にY社との間で有期労働契約を締結して就労している嘱託社員のXらが、無期労働契約を締結している正社員との間に不合理な労働条件の相違が存在すると主張して、Y社に対し、正社員と同じ就業規則等の適用を受ける労働契約上の地位の確認を求めるとともに、正社員と同じ就業規則等が適用された場合に支給される賃金と実際に支給された賃金との差額等の支払を求めた事案。
Xらはいずれも定年退職前後とも撒車の乗務員として勤務してきた者であるところ、Y社の就業規則上、正社員と嘱託社員との間には、賃金等に関して、以下の相違があった。
【基本給】正社員 月給(在籍給、年齢給により構成。
在籍給は在籍1年目を8万9100円とし、在籍1年につき800円を加算。
年齢給は20歳をゼロ円とし、1歳につき200円を加算。)
嘱託社員 基本賃金 12万5000円
【能率給】正社員 当該月稼働額に属する職種の一定の指数を乗じた額を支給
e.g.12トン撒車 3.70%
嘱託社員 歩合給 撒車12トン車
稼働額×12%
【職務給】正社員 e.g.12トン撒車 8万0552円
【調整給】正社員 なし
嘱託社員 老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されない時期につき2万円
【精勤手当】正社員 該当者には5000円
嘱託社員 なし
【無事故手当】正社員 該当者には5000円
嘱託社員 該当者には5000円
【住宅手当】正社員 1万円
嘱託社員 なし
【家族手当】正社員 あり
嘱託社員 なし
【役付手当】正社員 該当者にはあり
嘱託社員 なし
【超勤手当】正社員 あり
嘱託社員 あり(時間外手当との名称)
【通勤手当】正社員 1か月定期券相当額 上限4万円
嘱託社員 1か月定期券相当額 上限4万円
【賞与・退職金】正社員 原則あり(退職金は勤続3年以上)
嘱託社員 支給しない