判例・事例

同じ業務で定年後再雇用、賃金差別は違法 ~長澤運輸事件のご紹介~③

2016年6月20日 労働条件に関する事例・判例


4 実務上の留意点
 まず、注意したいのは、この事案は定年後の嘱託再雇用者に関する事案ですが、
「有期契約労働者の職務の内容(①)並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲(②)が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず、労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について、有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設けることは、その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れない。」との点は、契約社員やパート社員など有期労働者一般にも当てはまる内容だということです(しかも、一般に「特段の事情」は嘱託再雇用者の場合よりも認められにくいと考えられます)。
そのため、この裁判例を踏まえれば、少なくとも①職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)と②当該職務の内容及び配置の変更の範囲については、正社員と有期労働者で異なるようにしておく必要があります。しかも、仮に就業規則上異なるように定めていたとしても、実績が非常に少ない場合には、異なると認めてもらえないことも想定されますので、運用にも注意する必要があります。
特に、本件と同様の乗務員(ドライバー)等については、①職務の内容を正社員と有期で異なるようにすることが難しい(同一であるといいやすい)ことから、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲につき、できるだけ差異を設けるように留意すべきでしょう。
5 おわりに
 これまで、企業の中核を担う人員として育成される立場にある長期雇用を前提とした正社員と非正規の有期労働者の労働条件が異なるのはむしろ「常識」であったかもしれませんが、このように、今有期については、これまでの「常識」が通用しなくなってきています。そこで、当事務所では、本年7月6日(水)に、セミナーを企画しています。
特に、有期労働者を多く雇用されている御会社につきましては必見の内容となっておりますので、ぜひご参加ください。
以 上

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