判例・事例

破産手続後も破産者が保有できる財産(自由財産)

2012年9月4日 破産、民事再生、任意整理


1 破産手続は、破産手続開始時点の財産と債務を清算する手続ですが、
破産手続後破産者の手元にお金が一切残らないわけではありません。
法律上、破産者の生活を立て直すことを支援するためにいくつかの
制度が定められています。
今回は、個人の破産者の経済的再生を支える自由財産について
ご説明したいと思います。なお、破産手続の運用は各地方裁判所ごとに
異なりますが、以下では大阪地方裁判所の運用を前提としてご説明します。

2 破産法は、破産者の財産を、破産財団と自由財産という二つの概念
によって区分しています。
破産財団とは、破産手続開始時点において破産者が持っている財産の
ことを指し、金銭に換価して、債権者に公平に分配されることを目的と
しています。
他方、自由財産とされるものには、
ア 破産手続開始後に破産者が労働により得た賃金等新たに取得した
財産(新得財産といいます。)や、
イ 破産手続開始時点に破産者が持っている財産ではあるけれども、
政策的に自由財産として認められる一定の財産、

があります。
破産者は、破産手続を経て、自由財産を元手に生活の立て直しを図ることに
なります。

3 自由財産のうち、後者の「破産手続開始時点に破産者が有している財産では
あるけれども政策的な理由により自由財産と認められる財産」には、どのような
財産があるのか、もう少しみていきましょう。

(1) 本来的自由財産
破産法は、破産者が経済的再生を図るために、99万円以下の現金及び
民事執行法等の破産法とは別の法律で差押禁止財産と定められている財産
について、自由財産として認めています。
これを、あとの自由財産拡張制度により認められる自由財産と対比して、
「本来的自由財産」といいます。
破産者の特別な申立てを必要とせず、破産法が当然に自由財産と認めている
ので、「本来的」とされます。
普通預金は、定期預金や貯蓄預金と異なり、預金の出し入れが自由で、
実質的に手持ちの現金と異ならないことから、現金に準じて扱われます(つまり、
99万円以下の普通預金は本来的自由財産として扱われます。)。
また、民事執行法等の破産法とは別の法律で差押禁止財産と定められている
財産としては例えば、給料債権(税金等を控除した手取金額の4分の3
相当部分。ただし33万円が上限)、生活保護受給権(これは生活保護法上の
差押禁止債権です。)、年金受給権(これは国民年金法等で定められた差押え
禁止債権です。)等
があります。この他にも差押禁止財産とされている財産
がありますので、さらに詳しい内容は、ご相談の際、弁護士にお尋ねください。

(2) 自由財産拡張制度
先ほどご説明した本来的自由財産だけでは、必ずしも破産者の生活を立て直すのに
十分でない場合があります。
そこで、破産者の生活状況等を考慮して、本来的自由財産以外の財産、例えば、
定期預金、保険解約返戻金、自動車、敷金返還請求権、退職金債権、
過払金等
について例外的に自由財産として裁判所から認められることが
あります。
これを自由財産拡張制度といいます。
自由財産拡張制度は、破産管財人が選ばれる場合(管財事件といいます。)に
のみ利用することのできる制度ですので、すべての破産事件について利用できる
わけではありません。また、自由財産の拡張が認められる財産の種類や金額に
ついても裁判所の運用基準がありますので、破産手続を申し立てる際に、弁護士
とよく相談していただければと思います。

以上

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