判例・事例

第三者から債務者の財産に関する情報の取得が可能に

2020年4月8日 その他


1 はじめに
改正民事執行法が、一部の例外を除き、令和2年4月1日から施行されます。今回はその中から、➀財産開示手続に関する改正と②第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設についてご紹介します。

2 改正の概要
(1)財産開示手続に関する改正
債権者等が、債務者の財産に対して強制執行を申し立てるためには、執行の対象となる債務者の財産を特定することが必要です。そこで、平成15年に、債務者の財産に関する情報を債務者自身の陳述により取得する手続として、財産開示手続が創設されました(旧法第4章)。
 しかし、この制度の利用実績は年間1000件前後と低かったことから、利用しやすく実効的なものにするため、以下のような改正がなされました。

ア 申立権者の範囲の拡大
例えば、公正証書により金銭の支払を取り決めた債権者等も利用可能になります。

イ 罰則の強化
・不出頭                    
・宣誓を拒んだ            
・陳述すべき事項につき陳述しなかった      
・虚偽陳述をした
    ↓
    ↓
    ↓
6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金

(2)第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設
具体的には、以下のことができるようになります。
①金融機関、振替機関等から、預金債権や上場株式・国債等に関する情報を取得(新法207条)
②登記所から、土地・建物に関する情報を取得(新法205条)
③市町村、日本年金機構等から、給与債権(勤務先)に関する情報を取得(新法206条)

ただし、③の給与債権に関する情報取得手続は、養育費等の債権や、生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみが申し立て可能になります。また、②、③については、財産開示期日から3年以内に限り申し立てることができます。そのため、未だ財産開示手続が実施されていない場合には、先行して財産開示手続を行う必要があります。また、財産開示期日から既に3年が経過している場合にも、改めて財産開示手続を行った上で申し立てをしなければなりません。

(3)登記所からの情報取得手続についての補足(施行時期)
新法205条(上記(2)②)については、改正民事執行法の公布日(令和元年5月17日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は適用されないことになっておりますのでご留意下さい。

3 コメント
改正によって、債権者が、債務者の財産に関する情報を取得できる途が広がりました。  
実務上対象財産として検討することが多い(それゆえ情報収集の必要性が高い)、預貯金等、不動産、給与に関する情報が対象とされています。

                                  以 上

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