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令和5年6月1日から改正消費者契約法が施行されます!

2023年5月11日 その他


令和5年6月1日から改正消費者契約法が施行されます。消費者契約法は事業者と消費者との契約に関する法律であり、今回の改正によって事業者は解約料の算定根拠の概要説明等、努力義務が追加されました。本稿では今回の改正の主なポイントについてご紹介します。

1 改正消費者契約法の主な改正事項
👉契約の取消権を追加
👉解約料の説明の努力義務
👉免責の範囲が不明確な条項の無効
👉事業者の努力義務の拡充

以下、それぞれ内容をご説明いたします。

2 契約の取消権を追加~消費者が契約を取り消すことができる類型が追加されました~
現在の法律でも、事業者が契約の締結について勧誘をする際、消費者が何度も断ったのに長時間居座ったり、退去の妨害等不当な勧誘行為を行い、それによって消費者が困惑して契約の締結をしてしまったときには、消費者は契約を取り消すことができます。

今回の改正では、新たに

①勧誘することを告げずに、退去困難な場所に同行し勧誘すること
例:知人から観光に誘われ、その知人が勤める店の車に乗ったところ、目的地の途中で、知人が勤める店の展示会場に連れていかれた。商品を勧められ、その店の車で来ていたことから断れず、契約してしまった。
②威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害すること
例:商品を勧められ、家族に相談したいと伝えたが、それはダメだと強引に契約を迫られ、やむなく契約した。
③契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にすること
例:不用品の買取りのために訪問した業者に対し、査定してもらうために貴金属を見せたところ、「切断しないと十分な査定ができない」と言われ、全ての貴金属を切断されてしまい、買取りに応じてしまった。

が取消できる類型として追加されました。

3 解約料の説明の努力義務
事業者は、契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金条項に基づいて、損害賠償又は違約金の請求をする場合、消費者から説明を求められたときにはその算定の根拠の概要を説明するように努めなければならない旨の規定が新設されました。

4 免責の範囲が不明確な条項の無効
事業者に対する賠償請求を困難にするような、不明確な一部免責条項(軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないもの)は無効となります。

×無効となる例:「法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します。」
○有効となる例:「軽過失の場合は、1万円を上限として賠償します。」

5 事業者の努力義務の拡充
・契約締結時だけではなく、解除時に努力義務が導入されました。
消費者の求めに応じて、事業者は解除権の行使に関して必要な情報を提供するように努めなければなりません。
・勧誘時の情報提供
消費者の知識・経験に加え、年齢、心身の状態も総合的に考慮した情報を提供するように努めなければなりません(知ることができたものに限ります)。
・民法548条の2第1項に定める定型取引を行う場合、消費者から請求があった場合には、定型約款の内容について必要な情報を提供するように努めなければなりません(定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置をしているときは除きます)。
・適格消費者団体(認定された消費者団体)から、不当条項を含む契約条項・差止請求に係る講じた措置の開示要請、解約料の算定根拠の説明要請があった場合には、応じるように努めなければなりません。

6 コメント
今回の改正によって、契約の取消権の類型が追加されました。事業者としては、勧誘の目的をしっかり告げる、相談の連絡については妨害しないようにする、契約に基づく作業は契約締結後に行うようにするといった対応が必要になると思われます。また、免責の範囲が不明確な条項は無効となりますので、契約書の内容を一度ご確認ください。そして、事業者の努力義務が新設・拡充され、努力義務にはとどまるものの、予期しない紛争を防ぐために適切な対応が望まれます。
                                               以上

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