判例・事例

治療費等の積極損害の範囲

2014年10月23日 交通事故


Q1.交通事故で負った怪我の具合を正確に知りたくて、セカンドオピニオンを得るために複数の病院で診
   察を受けたのですが、診察料を事故加害者に請求できますか。

A.治療費は原則として実費を請求することが可能ですが治療上の必要性・相当性がない場合は請求で
  きません。裁判例の中にはセカンドオピニオンを得るため、治療を受けている病院以外の2つの病院
  を受診する程度であれば相当性があるとして賠償を認めた例がある一方で、3ヵ所の病院で治療を受
  けていた場合に1か所の病院での治療費は認めなかった例もあります。他の病院での診察料が請求
  できるかどうかはその診察が必要かどうかの判断によるため具体的事情を無視して一律に請求でき
  ない、できると決めることはできませんが、診察を受けている病院以外に2か所以上の病院で診察を
  受ける場合は、請求できない可能性があるということを注意する必要があるでしょう。

Q2.後遺症の診断の後、しばらく通院していたのですが、この間の治療費は請求できるでしょうか。

A.後遺症が残ったと診察されるということは、治療してもそれ以上症状が改善しないと判断されたことを
  意味します。そのため、後遺症の診断を受けた後の治療については不必要な行為として治療費につ
  いては加害者に請求することは原則できません。しかし、症状の内容、程度、治療の内容によっては
  症状の悪化を防ぐために治療行為が必要となりその場合は、一定限度で治療費を請求することがで
  きる場合があります。

Q3.交通事故で負った怪我の治療の一環として鍼灸、マッサージ、リハビリのためにスポーツクラブなど
   に行きたいのですが、これらの費用も加害者に請求することはできますか。

A.鍼灸、マッサージ、スポーツクラブでのリハビリは医療行為ではないので、主治医の指示、承認がなけ
  れば基本的には認められません。医師の医療行為以外の症状改善のための費用を支出する場合に
  は事前に医師の判断を仰いでからの方がよいでしょう。

Q4.入院中に衣類等の諸雑費がかかってしまいましたが、雑費についても自己加害者に請求できます
   か。

A.入院雑費については、入院中にどうしても生じてしまう費用であり、交通事故がなければ負担せずに
  済んだはずの費用ですので、原則として請求することができます。もっとも、不当に高額になると雑費
  の必要性が否定されて請求することができません。なお、実務的には入院一日あたり1400円から
  1600円の雑費を一律に認める運用がされており、裁判でも一日あたりにかかる雑費を上記の範囲
  内の定額で認める運用がされています。

Q5.交通事故で負った怪我の通院のために交通費を負担しています。交通費についても加害者に請求
   することができますか。

A.被害者の方が負担した通院のための交通費はその実費を加害者に請求できるのが原則です。もっ
  とも、公共交通機関を使用できるにもかかわらずあえてタクシーを用いた結果、交通費が高額になっ
  ているような場合は、電車、バスなどの運賃を上限として交通費の請求ができることになります。また、
  自家用車の場合はガソリン、高速道路代、駐車場料金等の実費相当額が交通費として請求できます。

Q6.加害者が賠償金を支払わないので仕方なく弁護士に依頼して裁判をすることになりました。この弁
   護士費用を加害者に請求することはできますか。

A.交通事故の被害者から加害者に対する請求の場合は、加害者に対する請求可能金額の1割程度が
  弁護士費用として加害者に請求することが可能です。保険会社に対する保険金請求、保険会社から
  の求償請求の場合には弁護士費用を請求することはできません。なお、弁護士費用については加入
  されている損害賠償保険等に弁護士費用特約が付されている場合があり、その場合は弁護士費用を
  保険会社が負担してくれますので、確認をしていただくとよいでしょう。

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