判例・事例

営業秘密の保護強化(不正競争防止法の改正)について

2016年4月1日 知的財産権:特許・実用新案・意匠・商標・著作権・不正競争防止法


1 平成28年1月1日より営業秘密の保護を強化した改正不正競争防止法が施行されています(改正法の国会成立は平成27年7月3日)。本改正は、近年の新日鐵住金や東芝といった大手メーカーの機密情報流出事件、ベネッセの顧客情報流出事件等を受け、営業秘密の漏洩に対する抑止力を刑事・民事両面から向上させるために行われたものです。主な改正点は以下のとおりです。

⑴ 刑事規定

①罰金額の引き上げ(なお、日本企業の営業秘密を海外で不正使用し、または、それを目的として営業秘密を不正取得・漏洩する行為については海外重課を創設)
個人:上限1000万円→2000万円(海外重課3000万円)
法人:上限3億円→5億円(海外重課10億円)
②営業秘密侵害罪の非親告罪化
刑事立件のために、従前は被害企業の告訴が必要でしたが、これを不要としました。
③犯罪収益の没収規定導入
罰金を支払ってもなお加害者のもとに利得が残るようでは抑止力として不十分であるため、不正競争防止法に没収の規定が置かれました。
④処罰範囲の拡大
従前は、営業秘密の不正取得者(一時的取得者)及び一時的取得者から直接に不正取得した二次的取得者までしか処罰の対象とはされていませんでした。しかし、ベネッセ事件で顧客情報が転売を繰り返されていたように、これでは不十分です。そこで、三次的取得者以降の者についても、その者が不正に取得された営業秘密であることを知って取得した場合には処罰対象にされることとなりました。

⑵ 民事規定

営業秘密不正使用の立証軽減措置
被害企業が加害者に対し営業秘密の不正使用の差止めや、損害賠償請求をする際に、立証負担の軽減が図られました。

⑶ 営業秘密侵害品の流通規制(刑事・民事両面)

営業秘密侵害品(技術上の秘密を不正に使用して生産された物品)の譲渡・輸出入等を禁止し、差止めや損害賠償の対象とし、また、刑事罰の対象としました。従前は営業秘密の不正取得や開示行為については規制されていましたが、本改正により営業秘密侵害品を流通させる行為も規制の対象となりました。
2 ただし、周知のとおり、企業の保有する全ての情報が「営業秘密」として保護されるわけではありません。不正競争防止法によって保護される「営業秘密」とは、①秘密管理性(アクセスできる者を制限したり、書類に「部外秘」と記載して営業秘密であることを明確にしていること)、②有用性(設計図、製法等の技術情報や顧客名簿等の営業上の情報等事業活動に有用であること)、③非公知性(保有者の管理下以外では一般に入手不可能であること)の3要件を満たすことが求められます。企業の技術情報や顧客情報を保護するためには適切な管理体制の構築が必要となりますので、ご不明な点がございましたらいつでもご相談ください。

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