判例・事例

従業員が通勤途中にマイカーで交通事故を起こした場合の会社の責任

2013年6月4日 その他


 今回は、従業員の方が通勤途中に従業員所有のマイカーにより
交通事故を起こしてしまった場合の使用者の責任についてご紹介いたします。
仮に従業員の方が、人身事故を起こしてしまい被害者の方が死亡や後遺症を
負われるような大きな事故となってしまった場合、賠償額はときに何千万円
にもなってしまいます。これを会社が負担することになるのかどうかは
会社にとって非常に大きな問題です。
 交通事故の被害者が、会社に対して責任を追及する際の法的根拠としては
使用者責任(民法715条)又は運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)
が考えられますが、どのような場合に使用者の責任が認められているのかに
ついて検討してみたいと思います。

1 裁判例のご紹介
(1)純粋通勤使用・会社無関与型
 まずは、マイカーが会社の業務には一切使用されず、純粋に通勤に使用されて
おり、会社がマイカー通勤を助長したり関与していなかった場合についての
裁判例です。

・会社の責任を否定:
 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用しており、仕事帰りに事故を
起こしたが、会社がマイカー通勤を認容放任したこともなかった事例で、
会社の責任を否定(東京高裁昭和48年11月29日判決)。

・会社の責任を否定:
 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用しており、マイカー通勤について
会社の了承を受けていない場合において、通勤中はもはや使用者の指揮命令
による支配を離脱し、全く従業員の自由な活動範囲に属するものであるという
ことを根拠として、仕事帰りに事故を起こした事例で、会社の責任を否定
(東京地裁昭和42年11月29日判決)。

・会社の責任を否定:
 従業員が自家用車を用いて出張に行き、その帰途、交通事故を起こした。
会社では、従業員に対し、自家用車を利用して通勤又は工事現場に往復すること
を原則として禁止し、利用する場合は会社の許可を得るように指示しており、
従業員は、このことを熟知していて、これまで会社の業務に関して自家用車を
使用したことがなかった。このような事情のもとで、従業員は会社の許可を
得ず、無断で出張に自家用車を使用して事故を起こした事例で会社の責任を否定
(最高裁昭和52年9月22日判決)。

(2)純粋通勤使用・会社関与型
 次に、マイカーが純粋に通勤に使用されていたが、会社がマイカー通勤を
助長したり関与していた場合についての裁判例です。

・会社の責任を肯定:
 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用していたが、これを会社は黙認し、
かつ駐車場も使用させていた場合において、仕事帰りに事故を起こした事例で、
会社は従業員を監視・監督すべきだったとして会社の責任を肯定
(最高裁平成元年6月6日判決)。

・会社の責任を肯定:
 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用していたが、会社はマイカー通勤
をすることを前提にした通勤手当を支給することにより積極的にマイカー通勤
を容認していた場合において、通勤途中に事故を起こした事例で、会社は
普段から安全運転に努めるよう指導・教育すべき指導監督義務があったとして
会社の責任を肯定(福岡地裁平成10年8月5日)。

・会社の責任を否定:
 従業員が通勤のためだけにマイカーを使用しており、会社が借りた駐車場に
駐車していたが、その駐車料金は利用者が各自で負担しており、会社が燃料費や
維持費も負担していなかった状況のもとで、従業員が通勤途中に事故を起こした
事例において、会社の責任を否定(鹿児島地裁昭和53年10月26日)。

・会社の責任を否定:
 会社が自動車通勤者のために必要な駐車場を確保していたが、交通安全週間
などには従業員にチラシを配布する等して交通安全意識の向上を図っており、
4キロ以内というバス通勤手当もでない距離で専ら個人的な便宜のために
マイカー通勤をしていたという状況下で、通勤途中の交通事故の会社の責任を
否定(広島高裁平成14年10月30日)。

(3)業務使用型
 最後に、従業員のマイカーが会社業務にも使用されていた裁判例を紹介します。

・会社の責任を肯定:
 マイカーは主に通勤に使用されていたものの、会社の荷物運送のために利用
することもあり、会社は従業員のマイカーの維持費、修理費等の運行費を負担
していた。このような事情のもとで、従業員が帰宅途中にマイカーで事故を
起こした事例において、会社は従業員のマイカーの運行を支配し、そこから利益
も得ていたとの理由で会社の責任を肯定(大阪地裁昭和42年6月30日判決)。

・会社の責任を肯定:
 マイカーは主に通勤に使用されていたものの、会社の指示で業務場から業務場
への移動や他の従業員の運搬などにも使用されており、会社はこれを承認した
上で、ガソリン手当などの手当を支給していた。このような事情のもとで、
従業員が帰宅途中に事故を起こした事例において、会社は従業員のマイカーの
運行を支配し、そこから利益も得ていたとの理由で会社の責任を肯定
(最高裁昭和52年12月22日判決)。

2 検討
 以上のとおり、純粋通勤使用・会社無関与型では、裁判例は会社の責任を否定
する傾向が強いといえます。
 純粋通勤使用・会社関与型では、会社の関与の度合いが低い場合は会社の責任
を否定したものもあるようですが、会社がマイカー通勤を認めているような場合
は、原則として会社は責任を負うと考えておくべきでしょう。
業務使用型では、会社の責任はほぼ間違いなく肯定されると考えられます。

3 まとめ
 マイカー通勤を認めるかどうかは、会社の立地場所、従前の取り扱いなど
により様々なご判断があるかと思いますが、使用を認めない場合は、黙認する
ことなく使用禁止を形に残るよう文書で周知徹底し、駐車場の提供やマイカー通勤
手当、ガソリン代などは支払わないことで会社の態度を明確にする必要があります。
 会社がマイカー通勤を黙認している場合も含め認めている場合には、前述した
通り、原則として会社の責任は免れないと考えておくべきですが、普段から
安全運転を意識づける等して会社の監督責任を果たすと同時に、会社の業務に
マイカーを使用することは控えておくべきでしょう。
 また、万が一の事故ときに備えて、従業員の方には対物対人無制限の任意保険に
加入を強制するなどの措置を講ずることが必要となります。免許証のコピーや
自動車保険証のコピーなどの提出を求めるなどして、マイカー通勤する従業員を
監理しておくことが必要になります。必要であればマイカー通勤規定などを用意
してみてもよいでしょう。
 具体的な対策についてお困りであれば、いつでも御相談下さい。

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