判例・事例

「パワハラ」に関する最近の裁判例①

2016年3月1日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


1 はじめに

近年「パワハラ」をめぐる相談が増えています。労働局等における民事上の個別労働紛争相談件数(2014年度)も、いじめ・嫌がらせの相談が23万8806件中62191件(21.4%)と最多の相談内容となっています。

そこで、「パワハラ」に関する最近の裁判例をいくつか紹介したいと思います。

 

2 サントリーホールディングスほか事件(東京地判平26・7・31)

【事案の概要】

上司がX(入社後9年程度)に対し、「新入生以下だ。もう任せられない。」「何で分からない。おまえは馬鹿。」という旨の発言をしたことが、不法行為にあたるとして争われた事案。Xには、①上司が複数回にわたり指導したが、指示した業務を行わない、②指示した資料を提出しないまま、年次有給休暇に入る等の問題行動があり、共同プロジェクトに参加している他の部署からも、担当している資料作成の納期を守らない、上司からXに指示された作業を他のメンバーに丸投げするなど、Xの勤務態度に問題があるので改善指導をしてほしいとの要望がされたこともあった。

【裁判所の判断】

「新入社員以下だ。もう任せられない。」というような発言はXに対して屈辱を与え心理的負担を過度に加える行為であり、「何で分からない。お前は馬鹿」というような言動はXの名誉感情をいたずらに害する行為である。

→これらの上司の言動は、Xに対する注意又は指導のための言動として許容される限度を超え、相当性を欠くものであったと評価せざるを得ない。

→上司の不法行為責任及び会社の使用者責任(民法715条1項)を認めた(賠償額:合計297万円)。

【教訓】

注意・指導を行う場合には、問題となる行動を注意するにとどめ、人格否定に及ぶような表現はしないように気をつけましょう。そのためには、冷静な状態で注意・指導を行う必要があります。

 

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