判例・事例

「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」(平成30年3月)のご紹介

2018年6月4日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


はじめに
 今回は、平成30年3月に出された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」を一部ご紹介いたします。

1 パワーハラスメントの現状
都道府県労働局における職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は増加傾向にあり、平成24年度以降、全ての相談の種別の中でトップとなっています(平成28年度は全体の相談件数の22.8%を占めています)。嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたことによる精神障害の労災認定件数も増加傾向にあります。
厚生労働省が実施した「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(以下、「実態調査」といいます。)の結果によると、従業員向けの相談窓口で従業員から相談されたテーマのうちパワーハラスメントが32.4%と最も多く、過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は36.3%、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、32.5%にものぼります。
実態調査の結果によると、パワーハラスメントの予防・解決に向けた取り組を実施している企業は52.2%となっていますが、規模別にみると、従業員1000人以上の企業の実施率が88.4%である一方、従業員99人以下の企業の実施率は26.0%と、企業規模が小さくなると実施率も低くなっています。
このように、パワーハラスメントの問題は社会的な問題となっている一方で、中小企業では十分な対策が行われていないのが実情となっています。

2 職場のパワーハラスメントの概念

 職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性(※1)を背景に、業務の適正な範囲(※2)を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
※1 上司から部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間などの様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。
※2 個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらない。

職場のパワーハラスメントの行為類型としては、以下の6つの類型が挙げられています(これら以外の行為は問題ないという趣旨ではない旨留保されています)。
ⅰ 暴行・傷害(身体的な攻撃)
ⅱ 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
ⅲ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
ⅳ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
ⅴ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
ⅵ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

3 事業主が講ずる対応策として考えられるもの
①事業主の方針等の明確化、周知・啓発
・社内報、HP等にパワーハラスメントの内容、パワーハラスメントがあってはならない旨の方針を記載し配布
・研修、講習の実施等
・就業規則等において、パワーハラスメントを行った者に対する懲戒規定を定める等
②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口の設置
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること等
③事後の迅速・適切な対応
・事実関係の迅速・正確な確認
・被害者と行為者を引き離すための配転等
④上記の対応と併せて行う対応
・相談者・行為者等のプライバシーの保護
・労働者が職場のパワーハラスメントに関し相談をしたことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知すること

4 ご案内
パワーハラスメントの具体例、発生時の対応策、予防策等については、7月18日(水)開催の弊所のセミナーでも紹介させていただく予定ですので、是非ご参加いただけたらと思います。

以 上

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