判例・事例

カスタマーハラスメント対策企業マニュアル等が作成されました

2022年3月31日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


厚生労働省は、顧客からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)の防止対策の一環として、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(以下「本件マニュアル」といいます。)や、リーフレット等を作成しました。今回は、本件マニュアルの概要をご紹介いたします。

厚労省サイト「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

1 はじめに~パワハラ対策が中小企業主の義務に~

労働施策総合推進法が改正され、令和4年4月1日から、中小企業主にも、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます。)防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。
雇用管理上必要な措置の内容の一つとして、事業主は、顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、例えば相談を受けて適切に対応するために必要な体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましいとされています(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)。

2 カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)とは

顧客や取引先など(以下「顧客等」といいます。)からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

《「顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合」の例》
👉企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合
👉要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合
《「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例》
👉要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの
身体的・精神的攻撃、威圧的な言動、土下座の要求、継続的・執拗な言動、拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)、差別的・性的な言動、従業員個人への攻撃・要求
👉要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの
商品交換の要求・金銭補償の要求・謝罪(土下座を除く)の要求

3 カスハラの判断基準

カスハラの判断基準は、業種の違い等によって企業ごとに違いが出てくる可能性があります。そのため、各社であらかじめカスハラの判断基準を明確にした上で、企業内の考え方、対応方針を統一して現場と共有していくことが重要です。
例えば本件マニュアルでは以下の観点での判断基準が挙げられています。

①顧客等の要求内容に妥当性はあるか
②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

なお、殴る・蹴るといった暴力行為は、直ちにカスハラに該当すると判断できることはもとより、犯罪に該当し得るものです。

4 カスハラ対策の基本的な枠組みの構築

実際にカスハラが生じたときに、企業として適切な対応を取ることができるように、事前の準備が必要となります。例えば本件マニュアルでは、以下のような取組の実施が挙げられています。

👉事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発:企業としての姿勢を明確にすることにより、従業員に安心感が生まれる。
👉従業員(被害者)のための相談対応体制の整備:関係部署や外部機関との連携を行い、企業として一体的に対応することが望ましい。
👉対応方法、手順の策定:行為別カスハラ(時間拘束型、リピート型、暴言型、暴力型、威嚇・脅迫型、権威型、店舗外拘束型、SNS/インターネット上での誹謗中傷型、セクシュアルハラスメント型)への対応方法例の準備。場合によっては弁護士への相談や警察への通報を検討。
👉社内対応ルールの従業員等への教育・研修:研修等は可能な限り全員が受講し、かつ定期的な実施が重要。
👉事実関係の正確な確認と事案への対応:事実関係の把握は複数名で正確に判断することが重要。
👉従業員への配慮の措置:従業員の身体の安全の確保、メンタルヘルス不調に対するアフターケアが必要。
👉再発防止のための取組:定期的な取組の見直し、事案や事例の情報共有。
👉その他:カスハラの発生状況の迅速な把握・情報の記録、取引先とのトラブルが発生した場合の対応等。

5 おわりに
カスハラは、労働者自身の身体的・精神的安全が脅かされるだけではなく、企業としても、業務効率の低下や金銭的な損失につながりうる問題です。また、企業が適切な対応をしなかったことによって、労働者から責任を追及される可能性もあり、企業としてカスハラ対策を講じることが必要となります。カスハラ対策を講じることによって上記の様なトラブルを防止するだけではなく、職場環境の改善等にもつながり、構築のメリットもございます。
体制の構築や、顧客・労働者への対応についてお困りの場合にはご相談ください。

↓↓↓      ↓↓↓      ↓↓↓      ↓↓↓
☆お問い合わせはこちらから
弁護士法人 天満法律事務所/お問い合わせ

☆オンライン法律相談も承っております。お気軽にお問合せください。
弁護士法人 天満法律事務所/オンライン法律相談

PAGE TOP