判例・事例

改正障害者雇用促進法の施行(平成28年4月1日)と実務上の問題(3)

2016年2月7日 その他の事例・判例


(4)勤務配慮が既得権化することによる、事業活動への影響。

例えば、障害の程度が一時的に重くなったために、軽易作業に変更をしたが、その後、回復をしてきたため元の業務に戻そうとしたところ、労働者がそれを拒んだ場合にどうすべきか。

回復したことが見定められた場合には、元の業務への変更等他の合理的配慮について、当該労働者と十分話し合う必要がある。当該労働者が、説得に対して合理的な根拠もなく応じない場合には、他の合理的配慮の内容として配置転換等を命じることになる。

ドイツのベルリン市清掃局の話だが、ごみ回収業務に従事していた労働者の健康状態が加齢とともに悪化し、当該業務の負荷が労働者の健康状態に悪影響を及ぼすことが懸念されたため、修繕業務に配転を行ったが、同様の症状を訴える労働者が今後多数になった場合に対応できるか心配をしているとのことだ。

合理的配慮は、当該労働者との関係でも、他の労働者との関係でも、既得権化するものではなく、その時々の当該労働者の障害の内容、程度に応じ、事業主の過重な負担とならないものであることを要する点を確認する必要がある。

なお、「合理的配慮指針」は、過重な負担となるか否かを判断する際の考慮要素として、①事業活動への影響の程度、②実現困難度 ③費用・負担の程度、④企業の規模、⑤企業の財務状況、⑥公的支援の有無の6点をあげている。

(5)障害者雇用を円滑に進めるために

身体障害者、知的障害者については障害者雇用率(現在2.0%)達成義務が課され(2018年より、法定雇用率の算定基礎に精神障害者(発達障害を含む)が加わることになり(激変緩和措置あり)、法定雇用率も引き上げられることが見込まれる)、未達成の場合の納付金制度もある中で、改正法の差別禁止、合理的配慮義務は、企業の側に戸惑いもあるだろう。雇用に際してのトラブルを防止するとともに、円滑に障害者雇用を進めてゆくために、法律専門家や公私の就労支援機関の助言や援助を受けながら取り組むことをお勧めしたい。

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