判例・事例

高年法改正~70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずべき措置(努力義務)について~

2021年2月19日 その他の事例・判例


改正高年齢者雇用安定法が本年4月1日から施行されます。
今回はその改正の大きなポイントをご紹介したいと思います。

 これまで:65歳までの雇用確保措置(義務)
  現行法では、定年を65歳未満に定めている事業主は
①65歳までの定年引き上げ
②65歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長制度等)の導入
③定年制の廃止
のいずれかの措置を講じなければならないとされています。

2 改正法:70歳までの就業機会確保措置(努力義務)
(1)改正法では、上記65歳までの雇用確保措置(義務)に加え
定年を65歳以上70歳未満に定めている、または65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主に
【高年齢者就業確保措置】
①70歳までの定年引き上げ
②70歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長制度等)の導入
③定年制の廃止
【創業支援等措置(雇用によらない措置)】
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(起業前提)
⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
   a 事業主が自ら実施する社会貢献事業
   b 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
  のいずれかの措置を講ずる努力義務が新たに課されます。

(2) ②(継続雇用)と【創業支援等措置】(④⑤)については、対象者を限定する基準を設けることも可能とされています。ただし、
対象者基準の内容は、原則として労使に委ねられるが、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議をした上で、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましい
労使間で十分に協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められない
 とされており、厚労省のパンフレットでは、
【不適切な例】として、例えば、
・会社が必要と認めたものに限る⇒基準がないことと等しく、改正の趣旨に反する
・上司の推薦がある者に限る  ⇒同上
等が挙げられており、
逆に【具体的・客観的な基準の例】として、
・過去〇年間の人事考課が〇以上である者
・過去〇年間の出勤率が〇%以上である者
・過去〇年間の定期健康診断の結果を産業医が判断し、業務上、支障がないこと
が挙げられています。

 例えばⅰ68歳まで定年延長、68~70歳まで継続雇用制度とする、ⅱ②(継続雇用)と④(業務委託)のうち本人が希望する制度を選べる制度とする等、措置を複数組み合わせることも可能とされています。また、②(継続雇用)につき、65歳以降は、特殊関係事業主(例:子法人・親法人等)以外の他社で継続雇用する制度も可能とされています。

 【創業支援等措置】(④⑤)を実施する場合には、
所定の事項を記載した計画を作成⇒同計画につき過半数労働組合等の同意を得る(※)
  ⇒同計画の周知等の手続を行う必要があります。
(※)①~③と両方を講じる場合は、同意を得る必要は必ずしもない(得るのが「望ましい」)

3 コメント
70歳までの就業機会確保措置は努力義務のため、違反に対する法的なサンクションはなく、指導等の対象となるに留まります(なお、「高年齢者雇用状況報告書」に関連する記載欄が追加されるようです)。
ただ、これまでの経過を踏まえると、いずれは義務に格上げされることが予想されます。また人材確保の視点から早期に検討しておく意義はあるでしょう。
なお、高年齢者雇用に関しては、本年3月25日(木)に開催予定のWebセミナーの中でも正社員と嘱託社員の同一労働同一賃金の観点から触れる予定です。興味・ご関心のある方は、ぜひご参加下さい。

以 上

PAGE TOP