判例・事例

個人事業主は労働者?(最高裁の考え方)

2015年6月1日 労働組合に関する事例・判例


コンビニ加盟店主の労働組合と団体交渉に応じなければならないか

~加盟店主は労組法上の「労働者」にあたるか?

1 コンビニ加盟店主を労働組合法上の「労働者」とする

平成26年3月13日、岡山県労働委員会は、セブン-イレブン・ジャパンに対し、フランチャイジーである加盟店主で組織するコンビニ加盟店ユニオンとの団体交渉を拒否したのは不当労働行為にあたるとして、団体交渉に応じるよう命じた。

また、平成27年4月16日には、東京都労働委員会が、ファミリーマートに対し、フランチャイジーである加盟店主の組織する労働組合との団体交渉に応じなかったことは不当労働行為に当たるとする命令を出している。

2 最高裁の考え方

個人「事業主」の「労働」組合と団体交渉というと、法律の専門家以外の方には違和感を持たれる方も多いと思われる。一般的な用語では、事業主と労働者は異なる存在と考えられているからだ。

しかし、すでに最高裁判所は、住宅設備機器の修理補修等を業とするカスタマーエンジニア、音響製品等の修理等を行う個人代行店、合唱団員などについて、労働組合法上の労働者に当たるとして、団体交渉に応じる義務を認めている(INAXメンテナンス事件、ビクターサービスエンジニアリング事件、新国立劇場運営財団事件)。これらは、いずれも個人事業主として業務委託契約を締結して業務に従事していた者だが、会社に対し、契約条件等について個人事業主の加盟する労組との団体交渉に応じる義務があるとした。

最高裁は、労組法上の労働者に当たるための要素として

①その個人事業主が会社の事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていたこと

②契約内容が会社によって一方的、定型的に決定されていたこと

③報酬は労務の提供それ自体の対価としての性質を持っていること

④具体的な業務を引き受けるか否かについて諾否の自由があったこと

⑤広い意味で会社の指揮監督の下に労務の提供を行い、一定の時間的・場所的拘束を受 けていたこと

⑥ 設備、機械器具等の所有、他人を使用する等の顕著な事業者性が認められないこと をあげた。

①、②は、労組法上の労働者性独自の判断要素であり、団体交渉による解決の適切性(①)、必要性(②)を表すものであり、④、⑤は労働者性を判断するための要素であるが「緩和された使用従属性」でよいとされる(荒木尚志東大教授)。③は、労組法3条の文言からくる要素であり、⑥は、労働者性を否定する方向の消極的要素とされる。(厚労省「労使関係法研究会」報告書(平成23年7月25日)参照)

※「団体交渉に応じる義務の意味」へ続きます。

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