判例・事例

個人事業主は労働者?(団体交渉に応じる義務の意味)

2015年6月1日 労働組合に関する事例・判例


最高裁の考え方はこちら

 

3 団体交渉に応じる義務の意味

必要な説明や資料提供を行いながら誠実に団体交渉に応じなければ、労働委員会により不当労働行為に当たるとされて、謝罪文の交付を命じられたり、場合によっては賠償金の支払いを命じられたりする。 個人事業主との業務委託契約の形式をとっているからといって、通常の下請け業者との話し合いでは済まない場合があるということだ。

4 コンビニ加盟店主に関する判断の特徴

上記コンビニ加盟店主に関する労働委員会の判断で注目すべきは、従業員を使用する個人事業主について労組法上の労働者に当たるとした点だ。2の最高裁の考え方で紹介したように、他人を従業員として使用していることは、顕著な事業者性を表す要素として労働者性を否定する消極的要素の一つと考えられている。

上記岡山県労委、東京都労委の判断は、上記最高裁判決の後に出されたものであり、最高裁の判断枠組みを踏まえながらも、労組法上の労働者性を肯定している。

岡山県労委の命令では、従業員の雇用は、年中無休・24時間開店という契約上の義務履行のために行っているのであり、自己の利益拡大のために雇用しているのではないとし、その他の契約条件も踏まえれば、加盟店主は事業にかかるすべてのリスクを負担する状況及びリターンを得るような状況にある場合を意味する顕著な事業者性があるとまではいえないとされた。

FC契約に基づくコンビニ加盟店にも異なる契約形態のものがあり、またフランチャイジーの側の事業規模にもさまざまなものがあるので、従業員を雇用する個人加盟店主を一律に労組法上の労働者と評価することはできないが、従業員を雇用している加盟店主であっても団交を命じられる場合があることは、注意を要する。

 

 

※「残された重要な問題」へ続きます。

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