判例・事例

コンビニ/教室経営者は「労働者」か?

2019年11月5日 労働組合に関する事例・判例


1 はじめに

最近、フランチャイズや請負等、雇用契約ではない契約関係にある人が、労組法あるいは労基法上の労働者に当たるかが争われる事案が増えてきています。○○法(例えば、労組法・労基法・労働契約法等)上の労働者に当たる場合には、その○○法が適用されることになり、例えば、労組法であれば不当労働行為、労基法であれば割増賃金、最低賃金、労災補償等、労働契約法であれば解雇・雇止め等が問題となり得ますので、非常に重大な影響があります。
そこで、今回は、フランチャイジー(フランチャイズ契約に基づきコンビニ/教室を経営している個人)が、労組法上の労働者に当たるかが問題となった、セブン-イレブン・ジャパン事件(以下「セブン事件」といいます)と公文教育研究会事件(以下「公文事件」といいます)の中労委/都労委の命令のポイントをご紹介したいと思います。

2 セブン事件と公文事件

(1)両事件はいずれも、フランチャイジーである個人が加入する労働組合が、フランチャイザー(以下「会社」といいます)に団体交渉を申し入れたところ、会社が、フランチャイジーは労組法上の労働者に当たらないとして団体交渉に応じなかったことから、労働委員会に不当労働行為の救済申立てがされた事案です。

労働委員会には、

ⅰ各都道府県単位の地方労働委員会

ⅱ中央労働委員会(中労委)

があり、ⅰの判断に不服がある場合には、ⅱに再審査を申し立てることができます。セブン事件も、中労委の命令の前に岡山県労委の命令が出ており、そこでは労組法上の労働者に当たると判断されていました。公文事件の方はⅰの東京都労委段階の判断です。

(2)労組法上の労働者性の判断枠組みとしては、

①事業組織への組入れ(労働供給を行う者たちが、相手方の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労働供給を行うなど、いわば相手の事業組織に組み入れられているといえるか)
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性

という判断要素に照らし判断すること、

①の「事業組織への組入れ」の判断に関しては、補充的に
④業務の依頼に応ずべき関係
⑤時間的・場所的拘束及び広い意味での指揮監督
⑥専属性

といった要素も考慮すること、

⑦他方、当該労務供給者が、自己の独立した経営判断でその業務を差配すること等により利得する機会を恒常的に有するなど、事業者性が顕著である場合には、労組法上の労働者性は否定されること

という枠組みが実務上定着しており、セブン事件・公文事件の命令も、少なくとも上記各判断要素(ただし、④についてはフランチャイズの場合、基本契約の存在を前提に個別の業務が依頼されるわけではないので除かれています)を総合的に考慮して判断しているようです。
しかし、セブン事件ではフランチャイジーは労組法上の労働者に当たらないとされたのに対し、公文事件では当たると判断されました。

(3)両事件で結論に差が生じた理由は、特に

ⅰ経営者としての相当の裁量の有無(特に⑦➀に関係)、
ⅱ経営者自らが、店舗/教室運営業務に従事することが義務づけられていたか(特に⑦➀③⑤に関係)、
ⅲ法人の関与(特に⑦③に関係)

の3点にかかる事案の違いにあるのではないかと考えます。

具体的には、セブン事件では、一定の制約はあるものの、商品の仕入量を決めたり、推奨商品をどの範囲で販売するかを選択したり、推奨商品以外の商品を販売したりすることで、自己独立した経営判断により利得することが可能であり、またⅱの義務づけがないため、自ら店舗においてどの程度稼働するか判断することにより自己の利益を増大させることができました。そして、実際に、加盟店の営業利益の分布状況をみても、売上高が同じ水準であっても、それに対応する営業利益にはばらつきがあるなど、ⅰの経営者としての相当の裁量が認められ、独立した事業者としての性格が強いと評価しやすい事案であったといえます。

これに対し、公文事件では、教室経営者は、指導方法、教材、月額会費の額といった学習塾経営の成否を左右する基本的な要素について自ら選択することはできず、広報・宣伝にも独自性を発揮する余地は実態としてほとんどなく、また、教室経営者は、(スタッフを雇っても)直接生徒の指導に当たらなければならないとされていた(ⅱの義務づけあり)ことから教科数も事実上制限されるであろうこと、会費と冷暖房費以外の費用を徴収することは原則として認められておらず、公文式指導及び教室運営と関係のない物品の販売も禁止されていることから、教室経営者自身の才覚や学習指導力により収入を増やすことは事実上困難であると判断されており、ⅰの経営者としての相当の裁量が認められる状況でなく、独立した事業者としての性格が弱いと評価しやすい事案でした。

また、いずれの事件も会社とフランチャイズ契約を締結するのは経営者個人のみとされていましたが、セブン事件では(経営者が役員をつとめる)法人を共同フランチャイジーとすることが可能であり、その場合、経営者は皆、当該法人から役員報酬等を受け取っており、会社から引出金等の金員を直接受け取ることはありませんでした。この点も、事業者性や報酬の労務対価性との関係で、労働者性を否定する方向に働いたと評価し得ます。

3 考察

以上を前提に、特にフランチャイズ契約において、フランチャイジーの労組法上の労働者性がなるべく問題とならないようにするのであれば、可能であれば法人を契約当事者とする。それが難しく、個人とせざるを得ない場合も、

・できればセブン事件のように法人の関与を認める
・フランチャイジーに自らの工夫で売上や利益を増やすことができるだけの一定の裁量を認める
・フランチャイジー自らが店舗/教室運営業務等の現場業務に従事することを義務づけない

方向で検討するのが重要であると考えます。

                                       以上

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