判例・事例

「育児休業給付金」の被保険者期間の要件が一部変更されます

2021年9月6日 賃金に関する事例・判例


令和3年9月1日から、育児休業給付金の被保険者期間の要件が一部変更されます。
今回は、改正の内容を具体的な事例とともにご紹介いたします。

第1 育児休業給付の被保険者期間
・育児休業給付を受給するためには、育児休業を開始した日前2年間に、被保険者期間が12か月以上必要とされています。
・しかし、1年程度勤務をした後、産前休業を開始したようなケースにおいて、出産日のタイミングによっては、上記受給要件を満たさないケースがありました。そのようなケースであっても受給要件を満たすように、被保険者期間の計算の起算点について特例が設けられました。内容は以下のとおりです。

【旧雇用保険法】
育児休業開始日を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上(※1)ある完全月が12か月以上あること。
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【新雇用保険法】
被保険者期間において上記要件を満たさないケースでも、産前休業開始日等(※2)を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日)が11日以上ある完全月が12か月以上ある場合には、育児休業給付の支給に係る被保険者期間要件を満たすものとする旨を追加。

(※1)
11日以上の月が12か月ない場合、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として算定します。

(※2)
・産前休業を開始する日前に子を出生した場合→「当該子を出生した日の翌日」
・産前休業を開始する日前に当該休業に先行する母性保護のための休業をした場合→「当該先行する休業を開始した日」
が起算点となります。

第2 具体的事例
【ケース】
就  職:令和3年4月1日
産前休業:令和4年4月5日~
出 産 日:令和4年4月30日
産後休業:~令和4年6月25日
育児休業:令和4年6月26日~

産休

【旧雇用保険法の場合】
・育休開始日(令和4年6月26日)を起算点とします。
・育休開始日から、育休開始日の2か月前である同年4月26日(①時点)までは、産前・産後休業のため就労していませんので、被保険者期間として計上しません。
・①時点から、さらに1か月前である同年3月26日(②時点)までは、就労日が11日以上ありませんので、被保険者期間としては計上できません。
・②時点から、令和3年4月26日(③時点)までは11か月間の被保険者期間があります。
・③時点から、就職日までは、1か月に満たない期間として、2分の1か月として計上されます。
→被保険者期間は合計11.5か月であり、被保険者期間12か月を満たしません。

【新雇用保険法の場合】
・産休開始日(令和4年4月5日)を起算点とします。
・産休開始日から、令和3年4月5日(④時点)までで、被保険者期間は12か月あり、被保険者期間12か月を満たします。

第3 対象者
育児休業開始日が令和3年9月1日以降の方が対象になります。

第4 今回の改正によって、これまで育児休業給付金の受給要件を満たさなかった場合でも、支給対象となる可能性があります。特に、1年程度勤務をし、その後産前休業を開始したようなケースにおいて支給対象となる可能性がありますので、ご確認ください。

                                   以上

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