判例・事例

令和5年4月1日施行の法改正~割増賃金率の引き上げ、賃金のデジタル払い~

2023年3月9日 賃金に関する事例・判例


今回は、令和5年4月1日施行予定の労働基準法改正についてご紹介いたします。

1 割増賃金率の引き上げ
(1)割増賃率について
令和5年4月1日から、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が50%になります。同日から労働させた時間について、割増賃金の引き上げの対象となります。

≪現行≫                ≪令和5年4月1日から≫
月60時間超の残業割増賃金率       月60時間超の残業割増賃金率
大企業  ➡ 50%       ⇒   大企業、中小企業ともに50%   
中小企業 ➡ 25%           ※中小企業の割増賃金率を引き上げ

(2)深夜・休日労働の取扱い
👉深夜労働
月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%以上+時間外割増賃金率50%以上=75%以上となります。
👉法定休日
1ヶ月60時間の法定時間外労働の算定には、法定休日に行った労働は含まれませんが、それ以外の休日に行った法定外労働は含まれます。

(3)代替休暇
1ヶ月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するために、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。
代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合には過半数代表との間で労使協定を結ぶことが必要となります。
労使協定では、
①代替休暇の時間数の具体的な算定方法(60時間を超えた時間外労働時間数×換算率※)
②代替休暇の単位(原則として半日または1日。但し、①の代替休暇の時間数と時間単位年休を合わせて半日又は1日にすること可)
③代替休暇を与えることができる期間(60時間を超えた月から2ヶ月以内)
④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
を定めます。
※換算率=60時間超の割増率-60時間以内の割増率

2 賃金のデジタル払い
賃金は原則として通貨払いです(労働基準法第24条)。ただし、労働者が同意した場合には、例外として①銀行口座と②証券総合口座への賃金支払いが認められていました(労働基準法施行 規則第7条の2)。
令和5年4月1日から、③資金移動業者の口座への賃金支払い、すなわちデジタル支払いができるようになりました。同日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行い、その後数か月の審査を経て基準を満たした資金移動業者が指定されるため、当該資金移動業者の中から選択して実際に賃金のデジタル払いができるようになるまではまだ時間がかかると思われます。賃金のデジタル払いを行う場合には、労使協定を締結することが必要です。

3 コメント
上記改正に対応するために就業規則の変更や労使協定の締結が必要となる場合があり、新しく代替休暇や賃金のデジタル払いを導入する場合には、就業規則に記載しなければなりません。対応にお困りの場合には是非ご相談ください。

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