固定残業代Q&A
2024年10月1日 賃金に関する事例・判例
割増賃金の支払いを適切に行っていない場合、労働者との間でトラブルが生じる可能性があります。
今回は、割増賃金の支払い方法の一つである固定残業代に関するQ&Aをご紹介します。
1 固定残業代とは
固定残業代とは、一定時間分までの時間外労働、休日労働及び深夜業に対する割増賃金として定額で支払われる賃金を言い、以下の要件が必要になります。
要件1
通常の労働時間の賃金部分と割増賃金相当部分を判別できる。
➡例えば…基本給の中に割増賃金が判別できない形で組み込まれていたり、基本給とは別に残業代が支払われていてもその中で実質的に通常の労働時間の賃金と割増賃金が区別できない形で組み込まれている場合、固定残業代として認められません。
要件2
時間外労働等に対する対価として支払われている。
➡例えば…固定残業代として支給していても、当該手当の名称が「営業手当」等固定残業代と関連がない名称とされており、また計算方法も時間外労働時間に関連しない形で計算されているような場合は固定残業代として認められません。
2 固定残業代に関するQ&A
Q1 固定残業代を支払っていれば別途割増賃金を支払うことは不要か?
A1 固定残業代の額が法所定(労働基準法第37条等)の割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要があります。
Q2 固定残業代を採用する場合には、求人の際労働者にどのように説明すれば良いか?
A2 以下の内容を書面等で労働者に明示することが望ましいでしょう。
① 固定残業代を除いた基本給の額
☝上記要件①を満たすためにも、通常の賃金と固定残業代を区別した記載が必要です!
② 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
☝上記要件②を満たすために、なるべく時間外労働時間等以外の考慮要素を含めないよう工夫すると良いでしょう。
③ 固定残業代を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
【記載例】
1 基本給×円(②の手当を除く額)
2 □□手当(時間外労働の有無に関わらず、〇時間分の時間外手当として△△円を支給)
3 〇時間を超える時間外労働についての割増賃金は追加で支給
※ 深夜労働や休日労働について固定残業代を採用する場合も同様の記載が必要です。
Q3 時間外労働時間数が固定残業代として定めた時間数を下回った場合、固定残業代を減額して支払っても良いか?
A3 固定残業代として定めた時間数を下回った場合でも、固定残業代を減額することはできません。
Q4 固定残業代として定める時間数は何時間でも良いのか?
A4 上限に関する規定はありませんが、労働基準法の改正により時間外労働時間数の上限が原則月45時間とされたこともあり、それを超える長時間の時間外労働時間数を定めると公序良俗に反し無効と判断される可能性があります。
3 コメント
割増賃金の支払いについて固定残業代を採用する場合は、その内容や計算方法について労働者に対し丁寧に説明を行うことが必要であり、労働契約書の記載や就業規則での規定も必要になります。
固定残業代に関してご不明な点がございましたら是非ご相談ください。
以上