判例・事例

労働時間の適正な把握をしましょう

2024年12月5日 労働時間に関する事例・判例


近年の働き方改革による時間外労働時間の上限規制や、副業・兼業の促進、テレワーク等働き方の多様化によって、労働時間管理の明確化が求められるようになっています。
今回は、労働時間の適正な把握の仕方についてご紹介いたします。

1 労働時間とは
労働時間とは…
使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当します。
例:
① 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業所内において行った時間
② 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保証されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)
③ 参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

2 労働時間の把握に関するQ&A
Q1 勤怠管理システムの端数処理機能を使って、1日の時間外労働のうち15分に満たない労働時間は切り捨てしても良いか?
A1 労働時間は1分単位で管理する必要があり、端数を切り捨てることは認められません。
※ ただし、例外として1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは認められています(昭和63年3月14日付基発150号)。
※ また、1日の労働時間について、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは問題ありません。

Q2 タイムカードの打刻前に作業(制服への着替え、清掃、朝礼など)を義務付けているが、労働時間として扱わなくてよいか?
A2 上記1で説明したとおり、使用者の指揮監督下で義務的に行われている場合は労働時間となります。ただし、頻度や義務的な性格が弱い作業については労働時間と解されない場合もあります。

Q3 昼休みに電話や来客応対する場合は、労働時間に含まなくてよいか
A3 電話や来客対応も業務とみなされますので、労働時間に含まれます。そのため、電話や来客対応で昼休みが費やされてしまった場合別途休憩時間が必要となります。

Q4 どのように労働時間を把握すれば良いか?
A4 原則
・使用者が自ら現認することにより労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間等の客観的な記録を基礎として労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する。
やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合は、労働者に対して適正な申告を行うよう十分な説明をする等の措置を講じることが必要になります。

3 コメント
労働時間を適正に把握できていない場合、賃金の未払等の問題が生じるおそれがあります。また、労働者の労働時間を把握して適切に管理することによって、労働者の心身の健康を保ち、別記事でご紹介した労働者の過労死等を防止し生産性の向上にも繋がります。
労働時間管理についてお困りの際は是非ご相談ください。

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