債権回収の手法
まず、債権の存在を示す証拠が手元にあるのか確認する必要があります。
債権回収に着手したものの、債権の存在を示す証拠がないために相手方に取引の存在を否定されてしまっては、債権回収は頓挫してしまいます。
代表的な証拠としては、契約書が挙げられます。
しかし、長年の付き合いがあるなど取引先を信用して厳密な契約書を作成していないことも多いかと思われます。そのような場合には、
・注文書
・請書
・納品書
・請求書
等の書面や担当者間のメール、FAXのやり取りも重要な証拠となり得ます。
残念ながら債権の存在を示す証拠がない場合は、債務承認書を新たに作成したり、債務を承認する旨の相手方の発言を録音したりする等証拠を新たに作ることも検討する余地があります。
書面による請求の方法として、内容証明郵便が考えられます。
会社名義で送ることもあれば、場合によっては弁護士名義で送ることもあります。特に弁護士名義での内容証明郵便の効果は大きいとされています。
内容証明郵便により、「請求をするんだ」という強いメッセージが相手方に伝わり、心理的なプレッシャーにもなりますが、一方で相手方も弁護士に相談する等身構えてしまうので、内容証明を送る前に証拠を確保しておく必要があるでしょう。
相手方が任意に支払うことを約束した場合は、後日の紛争を防ぐために、合意書、覚書等を作成して書面化しておく必要があります。
合意の際、相手方が会社である場合は、その代表者や親族等に連帯保証人になっていただくことができれば回収の可能性はより高まります。
場合によっては、公証役場で公正証書を作成することも考えられます。公正証書の作成に当たっては、その金額に応じて公証人に対して支払う手数料が発生しますが、相手方が約束通り支払わない場合に、訴訟を経ることなく強制執行を行うことができるという大きなメリットがあります。
相手方が任意に支払わない場合や一度は支払いを約束したにもかかわらず結局は約束通り支払わないような場合には、以下のような裁判上の手続きを検討することになります。
[1]民事訴訟
相手方が任意に支払わない場合や一度は支払いを約束したにもかかわらず結局は約束通り支払わないような場合には、以下のような裁判上の手続きを検討することになります。
請求額が60万円以下の場合には、簡易裁判所に少額訴訟を提起することも考えられます。
少額訴訟の場合、原則1回で判決が出るので、迅速な解決が可能です。
[2]支払督促
支払督促は、相手方の住所地の簡易裁判所に申立てを行います。相手方から異議が出ると、通常訴訟に移行してしまうことに注意が必要です。
[3]民事調停
民事調停は、裁判所が間に入って話合いを行う手続です。話し合いがまとまらなければ、裁判をすることになります。
「請求を認める判決が出たのに相手方が支払いをしない」、「裁判で和解が成立したのに相手方が支払いをしない」等の場合には、強制執行をすることになります。
公正証書(直ちに強制執行を行うことを債務者が受諾する旨の記載があるものに限ります)が存在する場合には、裁判等を行うまでもなく直ちに強制執行をすることができます。
強制執行の対象となる財産としては、以下のものが挙げられます。
[1]不動産
相手方所有の土地建物を差し押さえて競売し、債権を回収することができます。相手方が会社の場合は、会社の登記を調べて本店の土地・建物が会社所有であれば、強制執行の対象とすることができます。
[2]債権
債権としてよく対象になるのは、相手方が有する売掛金債権や預金債権です。預金債権については、口座番号まで判明していなくてもいいですが、支店までは特定する必要があるとされています。
なお、現在、一部のメガバンク等では、弁護士会を通じて当該銀行に照会をかけ、債務者が当該銀行に口座を保有しているか否か、保有している場合にはどこの支店に保有しているのか調査をすることができます。調査の結果、支店まで把握できれば預金債権の差押えをすることができます。
[3]動産
動産としてよく対象になるのは、相手方が所有する在庫商品や機械類等です。申立てに当たっては、所在場所を特定する必要があります。
債権回収の手法について基礎的なことを解説させていただきましたが、どのような手法を採用するかについては、事案によって異なりますので、当事務所までお気軽にご相談ください。