労働問題でお悩みの経営者の方々、
まずはご相談ください。
労働問題(使用者側)について
賃金や解雇、労働条件などをめぐる労使紛争が増えています。企業業績の悪化や労働者の権利意識の強まり、一人でも入れる地域合同労組の活発化などが背景にありますが、一方で、企業の側にも、日常的に適切な労務管理が行われていない、発生した問題に対する対応が不適切で、問題をこじらせてしまったり、紛争を拡大させてしまう、従業員との信頼関係を壊してしまうといった例が数多く見られます。 当事務所では下記のようにこのような問題に取り組んでいます。
労働問題(使用者側)に対応する当事務所の方針
労働問題が発生してしまった場合
まずは、労働者の要求、行動は法律的に正当なものかどうか、使用者は、それに対してどのように対応すべきなのかを、法律や判例に照らして検討、判断をします。その上で、具体的な方針を決定してゆきますが、会社の実情や労働者の事情を踏まえた現実的な対策を取る必要性もあります。例えば、解雇した社員が、地域労働組合に加入し、解雇は無効だと団体交渉を申し入れてきた場合、解雇が法律上有効とされるための合理的な理由があるか否か事情をお聞きしながら判断します。その判断の結果いかんで、会社の方針は大きく異なることになりますが、たとえ解雇は法律上難しい場合でも、会社の実情と労働者の事情を踏まえ合意による退職を追求することも少なくありません。また、労働審判や裁判が起こされた場合は、法律的な検討を踏まえて、会社として正当な権利は主張しつつ、同時に会社経営に与える影響を極力少なくするために、迅速かつ適切な解決を目指します。
問題の発生を未然に防ぐために
労使紛争は、できる限り未然に防ぐ必要があります。他の労働者に与える影響も大きく、場合によっては企業経営に重大な影響を及ぼすこともあるからです。例えば、法律上無効とされる解雇をしてしまったあとで紛争になると、それを解決するためには多大な労力とコストを要することになりますから、事前に解雇の方針が妥当なのかどうかご相談ください。また、未払い残業代の問題が今後発生することのないように、賃金制度の改革も考えるべきでしょう。その場合、会社の実情と労働者の事情も考慮した現実的で妥当な制度改革を目指す必要があります。
各問題について
賃金の問題:残業代(時間外、休日労働)、賃金制度の変更等
残業代について
よくあるケース
残業代は、労働時間の問題と不可分の関係にありますが、現実の職場は、なかなか週40時間、1日8時間の法定労働時間の枠内で勤務させるのは難しいことです。そうすると、法律上、どうしても時間外労働の割増賃金、場合によっては深夜労働、休日労働の割増賃金(残業代)を支払わなければならないことになります。 多くの企業では、この残業代に対する適切な対策が講じられていないために、退職した労働者やその代理人の弁護士から多額の残業代請求の通知書が来てあわてるケースが少なくありません。時効が2年なので、通常は2年分の請求をしてきます。業種によっては、総労働時間が長いため数百万、場合によっては1000万円を超える請求をされるケースもあります。
その場合に行う対応
このような請求があった場合は、まず労働時間の実態、その裏付けとなる証拠の有無、賃金の内容等を教えていただき、残業代の発生の有無及びその金額を法律にしたがい計算します。 多くの場合は、労働者の側は、正確な資料に基づく計算はしていませんから、当方の計算額を念頭に置きながら、適切な金額での妥結を目指して交渉することになります。しかし、適切に対応しないと、労働基準監督署の調査、指導が行われ、当該労働者だけの問題ではなくなり、全労働者の残業代の精算を指導されたり、労働組合が介入してくる事態になります。こうなると経営に重大な影響を与えかねませんから注意が必要です。 また、訴訟になると、未払い賃金だけでなく、それと同額の付加金をペナルティーとして科されることになりますから、できる限り訴訟は避け、仮になった場合には負担を軽減するための対策を講じなければなりません。
残業代について
運送業界
運送業界は、未払残業代の問題が非常に多い業界です。その理由は、長距離運送による拘束時間が長くなること、車中やサービスエリアでの休憩時間や荷待時間の労働時間性が争点となることが多いこと、別の理由としては固定残業代(定額残業代)が支給されていることが多い一方で、固定残業代に形式上の不備があるために、固定残業代が残業代の支払として認められないということが考えられます。
ドライバーからの残業代問題
ドライバーからの残業代問題は、一度、紛争となると、他のドライバーとの関係でも問題となることが多く、会社全体に波及してしまうこともあります。一人のドライバーとの間で一定の残業代を支払い、問題を解決したと安心して、会社の制度や運用を変更することなくそのまま放置すると、また別のドライバーから同様の請求を受けてしまいます。残業代の請求は、退職後に主張してくるドライバーが多いですが、退職前、在職しながら残業代を請求してくるドライバーも少なくありません。ドライバーと会社間の対立が大きくなると社外の労働組合にドライバーが加入して紛争が複雑化してしまうことも多くあります。
原因の調査分析
023年4月以降は、中小企業についても月60時間を超える残業部分について割増率が50%にアップされるため、企業にあたえる経済的なダメージがより大きくなります。紛争を泥沼化させないためにも、個別の請求に対応するだけではなく、未払残業代が発生した原因を調査分析することが重要です。未払残業代が発生する原因は、業務の管理方法や賃金体系等が考えられますが、これらの原因を分析し、改善することで将来の紛争を予防することは、従業員からの残業代請求に対応することと同様に重要な課題です。
賃金制度の変更等
1.残業代の発生を抑えるために
まず労働時間の管理を、職場の実態を見ながら適切な方法で行い、無駄な残業を減らすことが求められます。 その上で、残業代の発生を抑える柔軟な労働時間制度を取り入れます。柔軟な労働時間制度については、労働時間の項をご参照ください。
2.固定残業代について
柔軟な労働時間制度の適用になじまない業務、職種については、固定残業代(一定の残業代を固定給として支給する)の採用を検討します。この際、最低賃金制度、行政の労働時間の上限規制にも注意しながら具体的な内容を決めることにします。
3.インセンティブを高めるための賃金制度について
労働者のインセンティブを高めるための賃金制度としては、職務給、年俸制、歩合給、その他の成果賃金制度等がありますが、会社の規模、業種、対象となる従業員の職種、職位等に応じて、最も適切な賃金制度を設計することになります。
解雇に関する問題: 普通解雇、懲戒解雇、整理解雇等
普通解雇、懲戒解雇
解雇には、勤務成績の著しい不良等を理由とする普通解雇と、従業員が服務規律に違反をした場合の懲戒解雇があります。 法律は、いずれの解雇についても客観的に合理的な理由があり、かつ社会的に相当な場合でなければ無効としており、厳しい条件を満たさなければなりません。
解雇通告した後で、もし解雇が無効とされると、それまでの賃金を全額支払うよう命じられ、場合によっては慰謝料の支払いを命じられることがあります。また、職場復帰させないのであれば、多額の解決金(解雇した事情によりますが、例えば1年半分の賃金相当額の解決金)を支払わねばならないことになり、企業経営上大きな負担となります。
解雇をする場合は、事前に解雇の十分な理由、証拠はあるのか、解雇以外に適切な方法はないのかを検討します。
整理解雇(企業経営上の必要による解雇)
経営上の困難から人員削減をせざるを得ない場合がありますが、その場合は、法律上4つの要件(要素)(①必要性②解雇回避努力③人選基準の合理性④説明)を総合的に考慮して有効かどうかを判断をします。一般に、労働者の側に責任のない理由による解雇なので、その判断は厳格です。やむをえず整理解雇をする場合は、できる限り早い段階から上記4要素を考慮しながら、慎重に手続きを進めてゆきます。
労働時間の問題:裁量労働・変形労働時間等
対処方法について
まず、適切な方法で労働時間の管理を行い、不必要な残業はできる限り無くします。いくら残業代を抑えても、長時間労働で過労死やあるいは精神疾患等の労働災害が発生しては元も子もありません。その場合は、残業代どころではない多額の損害賠償義務を会社が負うことになります。 一方で、業種、職務内容、会社の実情により、1日8時間、週40時間、週休制(1週間に1日は休日を設けること)の原則をそのまま実行することが業務の実態に合わない場合があります。その場合には、一定の要件と手続きの下で以下のような弾力的で柔軟な労働時間を定めることにします。
業務に応じた弾力的な労働時間制度
就業規則の変更手続きを踏んで、業務の内容に応じた柔軟な労働時間制度を導入します。具体的には、権限・地位や業務の内容によって、労働時間規制の適用除外となる管理監督者、裁量労働制のみなし労働時間、事業場外労働のみなし労働時間、変形労働時間制、フレックスタイムなどがあります。いずれの制度も労働者の権限や地位、担当業務の内容、勤務実態によって、どの制度が最も適切かを判断する必要がありますから、まず実情をご相談の際に教えていただくところから始めます。
労働条件の問題:雇用契約書、就業規則、労働条件の変更等
労働条件通知書、労働契約書、就業規則、賃金規定
労使紛争は、労働条件が書面で明確にされていない場合によく発生します。また、いったん紛争が発生すると、たとえ口頭で説明していると主張しても、証拠がないため通らないことが往々にしてあります。それを防ぐために、労働契約書や就業規則を整備します。
労働条件の変更について
労働条件を変更するためには、個別に労働契約書をすべての労働者と交わすか、あるいは就業規則を変更する必要があります。従業員の数が多数の場合は、実際上就業規則の変更により集団的、画一的に処理せざるを得ないことになるでしょう。就業規則がない場合は、新たに作ることになります。 また、変更に同意しない労働者がいる場合は、就業規則変更の方法をとらざるを得ません。但し、就業規則を変更しさえすれば労働条件を変更できる訳ではなく、就業規則変更に合理性が認められなければなりません。合理性が認められれば、反対する労働者に対しても変更した就業規則の効力を及ぼすことができますが、合理性が認められなければ、効力が及ばないことになってしまいます。 このような不都合を避けるために、変更に合理性が認められるように、事前に慎重な検討と手順を踏む必要があります。
労働組合に関する問題
よくあるケース
最近、いわゆる地域労組が労使紛争に介入してくる例が増加しています。組合結成通知書と団体交渉申入書を持って、会社に突然やってくる場合、突然FAXを送りつけてくる場合等がありますが、いずれの場合も適切に対応しないと、不当労働行為だとして地方労働委員会に申立てをされ、団体交渉に応じるようを命じられるとともに、謝罪の文書を労組に提出させられたり(ポストノーティス)、損害賠償を命じられたりするので注意しなければなりません。
団体交渉、労働委員会等
労組から団体交渉の申し入れがあったり、地労委に申し立てられた場合には、アドバイスのほか、会社の状況(交渉する体制がない、人材がいない等)によっては団体交渉の立会、交渉担当の委任等の対応をさせていただきます。
労働災害、メンタルヘルスの問題
最近、労働災害、特に精神疾患を理由とする労災の申請が増えています。精神疾患の原因として、長時間労働や職場のストレス、パワハラ等がよく問題にされますが、労災が認められると、それとは別に、会社に過失があると民事損害賠償も請求されることになり、多額の損害賠償の負担で、会社が経営危機に陥ることもあります。 労災防止の安全対策とともに、会社に過失があるのか、適正な損害賠償額はどれくらいか、慎重に検討する必要があります。