解決事例

労働事件

1. 未払い残業代

従業員からの未払い残業代請求から、従業員に対する損害賠償金を差し引けるか

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未払残業代請求の事件でご相談を受けた際、社長から、「むしろ当該従業員によって会社は損害を被っている」という訴えをお聞きするケースがあります。内容は業務上のミスから売上金の横領に至るまで様々ですが、会社の当該従業員に対する損害賠償請求権が成立するか否かを証拠などから正しく吟味することが必要です。

もし会社の従業員に対する損害賠償請求権が認められうる事案であれば、未払残業代の交渉の際にきちんと主張をして、包括的な解決の途を探ります。
法的に留意しておくべき点として、賃金全額払原則(労働基準法24条)があります。未払残業代請求権と会社の従業員に対する損害賠償請求権とを会社が一方的に相殺することは同原則に違反し、許されません。また、合意相殺をする場合にも判例上、合意相殺が「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要である」とされています。要するに単に書面に判をついてもらっただけでは不十分であり、労働者側で相殺の利害得失を十分理解していることが必要だということになります。

過去に当事務所で取り扱った事例では、労働者側にも代理人弁護士がつき、双方代理人で協議をした結果、未払残業代に関する紛争と横領に関する紛争とを一括的に解決することができたケースがあります。

2. 解雇

無断欠勤を続ける社員に対する解雇

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「1週間以上無断欠勤を続けている社員がいて、どうしたらよいでしょうか。」というご相談を受けることがあります。欠勤の理由は様々だとは思うのですが、社員側から十分な理由の説明もなく、会社側も困惑してしまうことが少なくありません。
とくに入社して日が浅い社員が無断欠勤を続けている場合、会社側が「これから責任ある仕事を任せられるとは思えない、辞めてもらいたい。」という反応を示すこともあります。

このような場合、解雇がまず頭に浮かびますが、当該社員と連絡がとれる場合には、まずは当該社員に就労意思がないことを確認してもらい、退職届を提出させることを試みるようアドバイスしています。これは、無断欠勤をしている理由が必ずしもはっきりしないことが多いということと、結果的に雇用契約の終了という効果を速やかに得られるからです。

当該社員と全く連絡がとれないような場合には、行方不明による欠勤が一定期間生じた場合の自動退職制度を就業規則に設けていない限り、解雇をせざるを得ません。
また、このような場合であっても原則として30日前の解雇予告は必要となりますので、解雇予告通知書を当該社員に送付しなければなりませんが、行方不明社員の場合、そもそもどこにいるのかわかりませんので、送付が困難な場合があります。このような場合には、簡易裁判所の掲示板に解雇の意思表示を掲示してもらうことによって、解雇予告の効力を発生させることができます(意思表示の公示送達)。
過去の事案では、クライアントからのご依頼で解雇予告通知書をお作りするとともに、簡易裁判所の公示送達の手続をご案内したケースがあります。

会社の業績不振を理由にした解雇

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業績の厳しくなっていた会社が、営業職の従業員を会社の経営状態が悪化したことを理由に解雇(整理解雇)しました。解雇をした従業員に弁護士が付き、解雇の有効性が争われました。整理解雇が有効とされるためには、①人員削減の必要性、②配置転換等の雇用関係を維持する努力(解雇回避努力)、③解雇する対象者選びが適切に行われたか(対象者選定の合理性)④事前に協議や説明が丁寧に行われていたかという4つの要素が必要とされています。

私たちが会社の代理人に就任した後、元従業員への説明が不足していると思われた人員削減の必要性や対象者選定の合理性を具体的に主張することにしました。人員削減の必要性については、クライアントの顧問税理士とも連携を取りながら月々の収支や前年の決算の状況に基づき主張をし、対象者選定の合理性については、日々の日報や他の従業員の営業成績と比較を行うことで、当該従業員の営業成績が芳しくないこと具体的に説明をしました。説明が功を奏し、裁判に至ることなく、相談から4か月程度の時間で当初の請求金額の半分程度という低額の解決金を支払うことで退職を前提とした和解ができました。

3. 有期雇用

契約更新の拒絶を争われた事例

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有期労働契約が期間満了となり更新もしなかったにもかかわらず、元有期労働者から雇用の継続(雇止めの無効)を主張されるケースがあります。
労働契約法は、有期労働契約であっても、過去に反復して契約更新され実質的に期間の定めのない労働契約と同視できる場合(労働契約法19条1号)や、契約更新に合理的な期待が認められる場合(同条2号)は、更新拒否(雇止め)について客観的に合理的で社会通念上相当な理由が必要とされます。

当事務所で取り扱った事例の中でも、雇用主が有期労働者との更新手続をあまり厳密に行ってこなかった結果、訴訟において雇止めの効力が激しく争われた案件がありました。
とくに有期労働者に契約更新の合理的期待が生じたかどうか(労働契約法19条2号)は、更新手続の実施状況のみならず、当該労働者の従事する業務の臨時性・恒常性、更新の回数、雇用の通算期間など他の要素も総合的に考慮されて判定されます。
前述の紛争事例では、クライアント企業の実情を丹念にお聴きして当該有期労働者には契約更新の合理的期待が生じていないと強く主張して争った結果、雇止めが有効であることを前提とした和解が成立しました。また、適正な更新手続をアドバイスし、今後の紛争予防に役立てていただきました。

4. セクシャル・ハラスメント

社内でセクハラが発生してしまったら

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司(男性)から職場でセクハラ行為があったとして、女性社員から会社に対して損害賠償請求がなされるケースがあります。
セクハラと一口に言っても、卑わいな発言にとどまるものから強制わいせつ罪といった刑法犯に該当するような悪質な事案に至るまで内容は様々です。しかし、セクハラ事案では当事者の主張するセクハラ行為の内容が食い違い、そもそもどのような行為が行われたのか事実認定に困難をきたす場面がよくあります。
当事務所では、会社からセクハラ事案に関するご相談があった場合、メール等の客観的な資料を確認しつつ、関係者から、行為内容、時期、回数等を丁寧にお聴きするようにしています。他方、調査の過程で、二次被害が生じないよう、セクハラ被害を訴えている女性社員のプライバシーに配慮することも必要となります。
セクハラ行為の存在が認められるような場合には、一定の金銭的な賠償をする必要がありますが、適正な賠償額はいくらかという点も法的な検討が必要となりますので、社内でセクハラ事案が生じてしまい、お困りの場合はご相談ください。

5. 懲戒処分

適切な懲戒手続きをアドバイスした事例

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ある従業員が複数の従業員に対してセクハラをしました。クライアントは、事態を重く見て、当該従業員を懲戒解雇する決断をしました。
懲戒解雇等の懲戒処分をする場合は、事前に対象者に対して懲戒の原因となる行為(懲戒事由)を伝えて言い分を聞くという告知聴聞の手続の機会を与えることが必要です。この告知聴聞の手続を欠くと懲戒処分が無効となることがあります。
クライアントから告知聴聞の手続の行い方について質問がありましたので、対象者の呼び出し状に記載しなければならない懲戒の原因となる行為の記載方法や告知聴聞手続において対象者から聞き取りすべき事項等を助言させて頂きました。その結果、アドバイス通りに告知聴聞手続を行うことができました。後に、懲戒解雇をした労働者が労働審判の申立をしてきましたが、クライアントが告知聴聞手続を適切に行っていたことで、裁判所でも、懲戒解雇の告知聴聞手続は適切なものであると評価がされました。

6. 労災

長時間労働により倒れたとして慰謝料を請求された事例

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業務時間中に倒れ、後遺症が残った従業員から、後遺症が残ったのは長時間労働をさせた会社に責任があるとして損害賠償請求がなされました。
時間労働により疾病が発症したというためには、厚生労働省が定める基準を参照することが有用です。残業時間が基準に満たないことを立証する方法としては、タイムカードやICカード等の出入室記録、PCのログイン記録等の客観的な資料が有用です。
従業員は、過酷な長時間労働を行ったと主張していました。たしかに、会社には残業はありましたが、時間外労働時間数は、厚生労働省が定める基準には満たないものでした。そこで、従業員が主張するような長時間労働の実態がないということを会社が管理していたタイムカードにより反論しました。従業員が主張する長時間労働がなかったことが明らかとなり、最終的には、低額の示談金を支払うことで和解することができました。

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