よくあるご質問

労働問題(使用者側)

解雇

ある社員を懲戒解雇にし、退職金についても一切支給しない措置を取りたいと思っているのですが、法的に問題はあるのでしょうか?

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確かに、多くの会社では、就業規則に懲戒解雇の場合には退職金の全部または一部を支払わなくてよいとするいわゆる減額不支給条項を設けています。しかし、懲戒解雇だからといって、常に退職金の減額や不支給が認められるわけではありません。
 退職金には、次の2つの性格があるといわれています。
まず、わが国では、若年の間は相対的に低い賃金水準に抑え、勤続年数が増えるにしたがって適正な賃金水準となっていくという賃金体系となっているため、退職時に賃金の不足分を清算する必要があります。そのため、いわば退職金は、賃金の後払という性格を持つと言えます。
 また、退職金は、在職中の特別な功労に報いるという性格も持つと言われています。
このように、退職金が特別功労報償という性格を持つことから、退職者に懲戒されるような事情がある以上、退職金の減額不支給条項は一般には有効であると考えられています。
 もっとも、退職金は、賃金の後払という性格を持つことから、懲戒解雇であるからといって、常に減額不支給が認められるということにもできません。
結局、減額や不支給が認められるのは、それまでの勤続の功労を抹消または減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為がある場合に限られます。
その場合にも、懲戒事由に見合った対応がされることが必要です。
具体的には、金銭の使い込み等により使用者に重大な損害があった場合や、重大な犯罪によって社会的に厳しい非難がされた場合等には、減額はもちろん不支給も許される場合があるでしょう。
 他方、勤怠不良、業務命令違反、私生活上の犯罪で重大なものではない等の場合には、不支給はもちろん、減額についても慎重に判断すべきでしょう。

賃金・労働時間・労働条件

当社の就業規則には有給休暇に関する定めをとくに置いていないのですが、ある社員から有給休暇がほしいと言われました。有給休暇を与えなければならないのでしょうか。

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年次有給休暇(以下「有給休暇」といいます。)というのは、労働者に対し、休日のほかに毎年一定日数の休暇を有給で保障する制度のことをいいます。
 有給休暇は、労働基準法(以下「労基法」といいます。)上、当該労働者が、①雇入れの日から6ヵ月以上継続勤務しており、②全労働日の8割以上出勤している場合に与えなくてはなりません(労基法39条1項)。そして、継続勤務年数が1年増加するごとに付与日数が増加する仕組みになっています(下記参照)。
  <継続勤務期間> <付与日数>
   6カ月          10日
   1年6カ月        11日
   2年6カ月        12日
   3年6カ月        14日
   4年6カ月        16日
   5年6カ月        18日
   6年6カ月以上     20日
 
 ですから、有給休暇は、労基法上労働者に認められた権利であるため、使用者の就業規則に特に定めがなくとも、法律に従って付与しなければなりません。

有給休暇の発生要件である、①6ヵ月以上の「継続勤務」とはどういう意味ですか。短期労働者を採用していれば、各契約期間を別のものとみてよいのでしょうか。

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労基法39条1項には、有給休暇の発生要件として、①当該労働者が雇入れの日から起算して6ヵ月以上継続勤務していること(及び②全労働日の8割以上出勤)が必要であると定めています。
 この「継続勤務」というのは、労働者の在籍(労働契約関係の存続)を意味しています。ですから、休業中や休職中も、労働契約関係が存続している以上、「継続勤務」にあたります。
 そして、「継続勤務」にあたるかどうかは、契約の形式ではなく、実態から判断されます。例えば、短期労働契約の更新に際して、空き期間があって、各契約の間に空白が生じている場合であっても、実態からみて「継続勤務」にあたると判断される場合があります。

有給休暇の発生要件である、②「全労働日」の8割以上出勤、とはどういう意味ですか。育児休業をとっている社員の扱いはどうしたらよいですか。

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労基法39条1項には、有給休暇の発生要件として、(①当該労働者が雇入れの日から6ヵ月以上継続勤務していること及び)②全労働日の8割以上出勤が必要であると定めています。この「全労働日」とは、労働者が労働契約上労働義務を課せられている日をいいます。
 そして、労基法上、①業務上の傷病による療養のため休業した期間、②産前産後の休業期間、③育児介護休業法に基づく育児休業、介護休業をした期間は出勤したものとみなすとされています(労基法39条8項)。

未消化の有給休暇はどんどんたまっていってしまうのでしょうか。例えば、勤続10年の社員が今まで一度も有給休暇を取っていないような場合、いきなり5カ月以上(161日)も有給休暇を与えなければならないのでしょうか。

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まず、当該年度に消化されなかった年休は、発生日から2年間で時効により消滅します(労基法115条)。したがって、当該年度に発生した年休は、翌年に限り持ち越せることになります。勤続10年の社員であれば、(勤続7年6カ月から8年6カ月の間及び8年6カ月から9年6カ月の間の各期間において、それぞれ全労働日の8割以上の出勤の要件を満たすことを前提に)、40日間(20日間+20日間)の有給休暇が法律上発生します。
 次に、使用者は、原則として、労働者が指定した時季(「時季」という言葉は普段あまり使われませんが、労基法上このように表現されており、「季節と具体的時期」の双方を含む概念です。)に有給休暇を与えなければなりません(労基法39条5項本文)。
 しかし、労働者の請求した時季に有給休暇を与えることが、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は例外的に、他の時季に有給休暇を与えることができるとされています(これを使用者の「時季変更権」といいます。同条項ただし書)。「事業の正常な運営を妨げる場合」といえるのは、当該労働者が有給休暇を請求した時季に行われる業務にとって、当該労働者が不可欠であり、かつ、使用者が代替要員を確保することが困難である等の事情が必要となります。
 とはいえ、1ヵ月以上にわたるような長期の有給休暇の取得は、使用者の方で代替要員を確保することが困難となりがちでしょうから、時季変更権の行使に関し、使用者の裁量的判断が認められることが多いでしょう。

計画年休制度とはどのようなものですか。

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有給休暇(ちなみに、計画年休の「年休」という言葉は、有給休暇と同じ意味です。)を具体的にいつ取得するかは個々の労働者が指定できることになっていますが(労働者の時季指定権)、年間の有給休暇のうち一定の日数に限っては使用者が労働者の取得する有給休暇の日を特定することができます。
 すなわち、使用者は、事業場の過半数代表者等との労使協定を締結することにより、最低5日間を労働者の自由に使えるようにしておけば、残りの年休日に関しては、労使協定に従って計画年休取得を義務付けることができます(労基法39条6項)。
 例えば、8月12日から16日まで一斉に有給休暇とすることも可能となるのです。あるいは、班別・グループ別に期間をずらしてある程度まとまった期間有給休暇とすることもできます。

時間単位で有給休暇を与えることはできるのでしょうか。

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平成20年改正労働基準法(平成22年4月1日施行)では、ワークライフバランスの観点から、使用者が事業場の過半数代表者等との労使協定を締結することにより、年間5日を限度として時間単位の有給休暇付与が認められることとなりました(労基法39条4項)。1日分の有給休暇が何時間分の有給休暇にあたるかは、労働者の所定労働時間をもとに決めることになります(ただし、一日の所定時間数を下回ることはできませんので、例えば、1日の所定労働時間が7時間30分で5日分の時間単位年休を与えようとする場合、7時間30分を切り上げて1日8時間とした上で、8時間×5日=40時間分の時間単位年休を与えなければなりません。7時間30分×5日=37時間30分を切り上げて38時間、ということにはならないのです。)
 もっとも、使用者がこの制度を導入した場合、あくまで労働者が時間単位の年休付与を求めることができるようになるだけであって、日単位の有給休暇請求に対して使用者が時間単位に変更して有給休暇を付与することできないので注意してください。また、時間単位の有給休暇請求に対して使用者が日単位に変更して有給休暇を付与することもできません。

パートタイマーにも年次有給休暇(年休)を与えなくてはいけないのでしょうか。法律ではどうなっていますか?

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労働基準法39条は、労働者に年休が認められると規定しており、正社員とパートタイマーを区別していません。そのため、パートタイマーにも年休が認められることになります。
 年休が認められるためには、①6ヶ月以上継続して勤務していること、②全労働日の8割以上出勤していることという2つの条件を満たす必要がありますが、これはパートタイマーも変わりがありません。
 ただし、年休が認められるとしても、一部のパートタイマーのように、一般の労働者より労働日数や労働時間が短い者は、より少ない日数しか認められません(これを比例付与制度といいます)。具体的には、①週単位で所定労働日数が定められている労働者では、週所定労働時間が4日以下の者(ただし、週所定労働時間が30時間以上の者は除きます)及び、②週以外の期間で所定労働日数が定められている労働者では、年間所定労働日数が216日以下の者(ただし、週所定労働時間が30時間以上の者は除きます)がこれにあたります。
 年休の日数は所定労働日数によりますが、例えば、週所定労働日数が3日の場合には、おおむね通常の半分の年休が認められることになります。
 なお、パートタイマーでは、有期雇用契約の場合も多いと思われますが、更新により実質的に労働契約が継続している場合には、継続勤務に該当し、継続勤務期間に応じた年休が認められることになります。

いわゆる残業や休日勤務を行った場合には、割増賃金を支払う必要がありますが、その金額はどのようにして計算するのでしょうか。

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まず、残業についてですが、法律上、時間外労働について割増賃金を支払う義務があるのは、1日8時間、1週40時間を超えた労働時間に対してだけです。会社によっては、1日の労働時間を7時間半などと決めているところもありますが、そうした会社でも、30分までであれば、残業をしても割増賃金を支払う必要はありませんし、1時間残業したとしても、30分の労働時間に対応する割増賃金を支払えば問題ありません。
また、遅刻した分残業させた場合には、1日の労働時間が8時間を超えていない限り、割増賃金を支払う必要がありません。
休日労働については、4週間に4日の休日がない場合に割増賃金を支払う必要があります。ですので、例えば、土日が休みの会社で、毎週土曜日は仕事をしていたといった場合でも、4週間に4日の休日はあるわけですから、休日労働についての割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、以上は法律の定める原則ですから、就業規則で会社の定める勤務時間を超える勤務の場合には割増賃金を支払うといった規定を置いている場合には、その規定によって処理することになります。

労働組合法7条は、使用者が団体交渉の申込みを受けた場合、正当な理由がなく拒否すると不当労働行為となるとしています。
それでは、どのような場合に不当労働行為となるのでしょうか。

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まず、使用者が処分権限を有しない事項について団体交渉を拒否しても、不当労働行為とはなりません。
例えば、単なる政治的な要求や、使用者と関係ない事項は、使用者が処分権限を有しない事項であり、団体交渉の対象となりません。
また、団体交渉は、労働条件について交渉することや労働協約を締結することを目的としていますので、そうした事項と関係のない事項については、団体交渉を拒否しても、不当労働行為とはなりません。
例えば、労働条件や人事管理に関する事項は団体交渉の対象となりますが、経営の基本方針といった経営管理にかかわる事項は、労働条件等に影響がない限り、団体交渉の対象になりません。
その他、組合活動に関する便宜供与といった労働組合の団体的活動に関する事項や、労働協約の所定事項についても団体交渉の対象になります。
もっとも、団体交渉の対象になる事項について団体交渉を拒否した場合にも、正当な理由があれば、不当労働行為とはなりません。
ただし、労働委員会で問題となっている事例のほとんどでは、正当理由はないとされています。
具体的には、組合交渉員が威嚇を行い、暴力・暴言を続ける場合や、毎月5回ないし10回といった業務に支障が生じるような場合、弁護士に依頼したところ、その弁護士の予定が合わなかった場合といった事情がない限り、正当な理由は認められにくいでしょう。
なお、団体交渉では、36協定を結ばずに残業をさせているといったような使用者に違法状態の是正の義務がある事項だけでなく、チェックオフの実施といった使用者に是正の義務がない事項についても交渉を要求される場合があります。
前者について誠実に交渉し、その是正に努めるべきであるのは当然ですが、後者についても、是正するかどうかはともかく、使用者としては、誠実に対応する義務があります。

企業法務

フランチャイズ契約と営業秘密、不正競争

私は、フランチャイズ事業を展開しているのですが、フランチャイジーが営業秘密を漏らしている可能性があります。
フランチャイズ契約上、どのような手段がありますか?

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フランチャイズ契約は、フランチャイザーが、フランチャイジーに対し、ノウハウ等の情報(フランチャイズ情報)を提供し、フランチャイズ・フィーという対価を得るという契約です。
 そして、フランチャイズ情報は、フランチャイザーが多額の費用を掛け、長年の経験の中で培ってきた貴重な財産ですが、これが第三者に開示されてしまうと、その価値は著しく損なわれてしまいます。そのため、フランチャイズ情報については、契約上開示が禁止されるのが一般です。こうした条項があれば、契約違反を理由に、損害賠償を請求することができます。 ただし、開示により損害があるとしても、その金額を証明することは困難が伴います。そのため、秘密保持条項には、損害賠償額の予定額を決めておくことも考えられます。
 なお、秘密保持条項がなくても、契約の内容から当然に保護すべき秘密については、損害賠償ができる可能性はありますが、どの範囲の情報が保護されるのかなどあいまいであり、まずはきちんとした秘密保持契約を作成することが必要です。
 また、秘密保持条項は契約中に関する条項ですので、契約終了後にも秘密の開示を禁止する場合には、その旨の条項を別に定めておく必要があります。

他に営業秘密を漏らしているフランチャイジーを規制する手段はないのでしょうか?

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不正競争防止法という、他人の名称を勝手に使用したり営業秘密を不当に取得すること等の不正競争行為を禁止する法律を利用することが考えられます。
不正競争防止法2条1項7号は、営業秘密を保有する事業者(以下、「保有者」といいます。)からその営業秘密を示された場合に、不正に競合する事業に用いる等の不正な利益を得る目的や保有者に損害を与える目的で営業秘密を使用したり、開示する行為を禁止しています。
 ただし、保護されるのは「営業秘密」つまり、秘密に管理され、事業上有用であり、一般に知られていない情報だけで、全ての情報が保護されるわけではありません。
また、全ての開示が禁止されるわけではなく、不正な利益を得る目的等がある開示であることが必要です。
 不正競争防止法で保護されることになれば、損害賠償のほかに開示行為の差止めが認められるため、かなり手厚い保護を受けることができます。

フランチャイズ契約との関係で、不正競争防止法について知っておいた方がよいことがほかにありますか。

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まず、フランチャイジーとの争いに関しては、フランチャイジーによる信用毀損行為がある場合に利用することが可能です。
 また、第三者と争いに関して、一番問題になるのが、類似の商品名や商号を用いるといった、商品や営業の混同に関するものです。こ の場合には、例えば、フランチャイズ契約において使用中の商標と同一の商号が登録されたときのように、「誤認混同のおそれ」があれば、商標法のほか、不正競争防止法によって、商号の使用を差し止めることができます。なお、こうした事態を防止するためには、第三者の営業誤認行為がある場合に、フランチャイジーがフランチャイザーに対して通知・報告する義務を負うことを定めたり、証拠収集等の協力義務を定めておくといいでしょう。

フランチャイズ契約

フランチャイズ契約とは、どのような契約なのですか?

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 フランチャイズ(FC)契約(以下「FC契約」といいます。)は、①本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対して、自己の商標等の標識の使用を許すとともに②経営のノウハウを提供し、本部の指導援助を受けながら同一のイメージのもとに事業を行う権利を与え③加盟店は、その対価(ロイヤルティー等)を支払う契約です。本部となる事業者にとっては、少ない資金で事業を拡大することができると同時に、直営店方式のように多数の社員を雇用することに伴う義務や負担、リスクを回避することができます。
 我が国では、1963年のダスキンや不二家のFCが最初といわれていますが、外食、コンビニなどで急成長してきました。

FC契約では、法律上どのようなことがよく問題になるのでしょうか?

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FC契約については、契約を結ぶ段階における本部の情報提供が不適切という問題、契約後FCを継続する段階の販売方法や仕入れ業者の指定がどの程度許されるのかという問題、契約を終了する段階の違約金、競業避止義務、守秘義務の問題等色々な問題が発生しています。

加盟店が、思ったように売り上げが上がらないのでFC契約をやめたいと言ってきたのですが、どのように対処したらよいでしょうか?

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FC契約時の説明、売り上げ見通しと違うと言って加盟店が損害賠償を請求した事件も多数ありますが、その点はおくとして、まずFC契約書に中途解約の定めがなければ、原則として一方的な解約はできません。契約の拘束力によって、期間が満了するまでは契約上の義務(ロイヤルティーの支払い義務等)を加盟店は負うのです。多くのFC契約書では、内容的な違いはありますが、事前の通告により一方的な解約を認める中途解約条項を設けています。
 同時に、中途解約をする際には、解約一時金の支払いを義務づけている契約書が多いでしょう。しかし、解約一時金の額が高額すぎると公序良俗違反で無効(民法90条)とされる可能性があります。本部としては契約の拘束力を高めるために解約一時金の金額を高めに設定したいところですが、他方加盟店側の営業の自由や経済活動の自由を過度に制限することはできないとされています。

加盟店が、思ったように売り上げが上がらないのでFC契約をやめたいと言ってきた場合、具体的には、どのくらいの解約一時金であれば妥当なのでしょうか?

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中途解約条項の内容や趣旨も契約書によって異なりますから、一律に決めることはできません。ロイヤルティーの金額も判断に影響します。裁判例では、前記の点のほかに、当事者の経済的な力関係、当事者に与える経済的な不利益の程度等のほか、本部が取引上の優越的な地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に加盟店に不利益となる取引条件を設定したといえないか(独占禁止法2条9項)が考慮されています(「日本さわやかグループ事件」)。「日本さわやかグループ事件」では、500万円以上の解約一時金条項を全部無効としました。ただし、判決も述べていいるところですが、常に解約一時金条項全部が無効とされるわけではなく、一部が無効として減額した解約一時金が認められる余地もあります。また、ほかに違約金条項が設けられているかどうかも問題になるので、具体的な事情をご相談下さい。

新会社法の活用法(株式についてⅠ~譲渡制限株式~)

当社の株式は、現在、譲渡制限が付されていませんが、全部の株式につき譲渡制限を付すにはどのような手続きが必要ですか?

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株主総会の決議により定款を変更しなければなりません。その際の決議要件は、議決権を行使できる株主の半数以上であり、かつ当該株主の議決権の3分の2以上の賛成を得なければなりません(法309条3項1号、324条3項1号)。例えば、発行済株式総数が100株の株式会社で、Aが70株、Bが20株、Cが10株保有していたとして考えてみますと、Aだけの賛成では可決されません。可決には、少なくともAに加えてBまたはCの賛成が必要になります。

現在、譲渡制限が付されていませんが、全部の株式につき譲渡制限を付す場合、譲渡制限に反対する少数株主に何か対抗手段はないのですか?

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反対株主は、株式を公正な価格で買い取ることを当該株式会社に請求することができます(法116条1項1号、2号)。

譲渡制限株式について、譲渡の承認をする機関はどこですか?

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取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会が原則ですが、定款で定めることにより、その他の機関とすることも可能です。従って、取締役会設置会社においても、例えば、株主総会を承認機関とすることもできます(139条1項)。

全ての譲渡制限株式の譲渡について、逐一株式会社の承認を求めなければならないのですか?

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定款に一定の場合、例えば株主間の譲渡の場合は承認したものとみなす旨の規定を置くことにより、その場合に限って株式会社の承認が不要となります(法107条2項1号ロ、108条2項4号)。

ところで、譲渡制限株式制度の趣旨は何ですか?

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わかりやすく言えば、株式会社にとって好ましくない人物が株主にならないようにするためのものです。特に中小企業において、好ましくない人物が株主となると、会社経営に直接大きな悪影響を及ぼすことが考えられますので、それを防止する要請は大きいのです。

譲渡制限株式の売買では株式会社の承認を要求することにより、好ましくない人物を排除できますが、相続によって譲渡制限株式を取得した者が好ましくない人物であるときは、どのような対抗策がありますか?

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確かに承認が必要なのは「譲渡による」取得に限定されていますので、相続の場合は承認の要否については問題になりません。
しかし、新会社法では、相続などの一般承継によって譲渡制限株式を取得した者に対して、当該株式会社から取得者に対して、自己に売り渡すよう請求できるようになりました。ただし、この売渡請求は、定款で定めておかなければなりません(法174条)。

譲渡承認請求と名義書換請求の関係は、どのように変わったのですか?

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旧会社法では、譲渡人が事前に譲渡承認を得ない形で譲渡制限株式を得た譲受人は単独で承認請求できる旨の規定がありました (旧商法204条の5Ⅰ)が、他方で名義書換請求は取得者と譲渡人が共同して請求しなければならない旨定められていたこともあり(旧商法206条の2Ⅱ)、両者の関係が必ずしも明確ではありませんでした。
 新会社法では、まず株式会社からの承認を受けていなければ、名義書換請求ができないことが明確化されました(法134条2号)。

新会社法の活用法(株式についてⅡ~自己株式~)

株主との合意により自己株式を取得することができますか?

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できます。平成13年改正前は、資本の維持、株主相互間の公平、会社支配の公正、証券市場の公正などの見地から自己株式の取得は原則禁止されていましたが、同改正により原則自由となりました。

自己株式の取得の際に、株主総会決議などは必要ですか?

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原則として、株主総会決議によって、①取得する株式の種類・数、②取得と引換えに交付する金銭等の内容・総額、③株式を取得することができる期間を定めなければなりません(法156条1項)。
特定の株主から取得する場合は、上記に加えて④その株主の氏名も決議しなければなりません(法160条1項)。この株主総会決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行わなければなりません(法309条2項2号)。

自己株式の取得方法には、どのようなものがありますか?

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合意による取得の場合は、①市場において取得する方法、②公開買い付け(金融商取引法第27条の2第6項)により取得する方法、③株主全員に譲渡の勧誘をする方法、④特定の者からの相対取引による取得に限られます。
①、②については上場株式について妥当します。
③は、会社は取得の都度、ⅰ取得する株式の種類・数、ⅱ株式1株を取得するとの引き換えに交付する金銭等の内容・数額、ⅲ株式を取得するのと引き換えに交付する金銭等の総額、ⅳ株式の譲り渡しの申込期日を定めた上で(取締役会設置会社においては取締役会決議で、その他の会社については株主総会決議で行うことを要します。)、株主に対し、当該事項を通知しなければなりません(法157条1項、158条1項)。通知を受けた株主が譲渡の申込をしようとするときは、株式会社に対し、その申込に係る株式の数を明らかにする必要があります(法159条1項)。そして、会社は、上記ⅳの期日に株式の譲り受けを承諾したものとみなされます(同条2項)。
④は、上記ⅰないしⅳの事項を定めて株主に通知する点は上記③と同じです(ただし、「Q自己株式の取得の際に、株主総会決議などは必要ですか?」の後段で述べた手続は必要です)。

株主総会決議を経ないなど違法な手続によって自己株式を取得した場合に何らかの不利益はありますか?

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まず関与した取締役等に刑事罰が科される可能性があります(法963条5項1号)。
そして、取得の効果については、明文の規定はありませんが、原則として無効であり、違法な取得であることを相手方が知らなかった場合などは会社は無効を主張できないとの見解(江頭憲治郎「株式会社法」有斐閣242頁)や原則として有効であるが相手方が違法な取得であることを知っていたか不注意で知らなかった場合に無効になるとの見解(相澤哲外2名編「論点解説新・会社法」商事法務150頁)などが唱えられています。いずれの見解にしても、会社においては、会社法が定める手続を踏むことが必要といえます。

自己株式の取得財源に何か規制はありますか?

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株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、取得が「その効力を生ずる日における分配可能額」を超えてはならない(法461条1項2号)とされています。ここでいう分配可能額とは、最終の決算期における貸借対照表から算出される剰余金の額から、最終の決算期後その日までの剰余金の減少額を控除し、最終の決算期後その日までに生じた債権者異議手続を経た剰余金の増加額を加算した額を原則とし、最終の決算期後その日までに臨時計算書類による決算を行った場合には、その期間の期間損益をも反映させた額であるとされています(法461条2項)。

株主との合意による取得以外に会社が自己株式を取得できるのは、どのような場合ですか?

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会社法上明文で規定されているものとしては、①取得条項付株式の取得(法155条1号)、②譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合の買い取り(同2号)、③取得請求権付株式の取得(同4号)、④全部取得条項付種類株式の取得(同5号)、⑤相続人等に対する売渡しの請求による取得(同6号)、⑥単元未満株式の買い取り(同7号)、⑦所在不明株式の買い取り(同8号)、⑧端数が生ずる場合の買い取り(同9号)、⑨事業全部の譲り受けに伴う取得(同10号)、⑩合併による消滅会社からの承継(同11号)、⑪吸収分割による取得(同12号)の場合があります。会社法施行規則で定められているものとしては、⑫株式会社が無償で取得する場合(規則27条1号)、⑬株式会社がその有する他の法人等の株式について自己株式の割当を受ける場合(同27条2ないし4号)、⑭株式買取請求に応じて自己株式を取得する場合(同5号)、⑮上記⑨ないし⑪以外の法人等が行う事業の全部譲渡、組織再編により承継取得する場合(同6号7号)があります。

自己株式も議決権や剰余金配当請求権は認められていますか?

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会社支配の公正さを維持するため、自己株式については、議決権をはじめとする共益権は認められていません(法308条2項)。
 また、自己株式については、剰余金の配当請求権は否定されています(法453条括弧書)。

自己株式を処分するにはどういう方法がありますか?

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まず消却する方法があります。株式を消却すると発行済株式が減少しますので、理論的には1株の価値は上昇します。取締役会設置会社では取締役会の決議で、それ以外の会社では株主総会決議で、消却する自己株式の種類、数を決定しなければなりません(法178条1項、2項)。
 次に募集株式の発行手続により処分する方法があります(法199条)。つまり自己株式を第三者に交付する方法ですが、他に募集株式の発行手続に服するのは新株等の発行があります。新株と既存の自己株式という差はありますが、いずれも株式を第三者に交付するという点で同じですので、同じ発行手続により規制されることになりました。
 他には、①取得請求権付株式などを会社が取得する際に交付する他の種類の株式として自己株式を用いる場合、②株式無償割当に自己株式を用いる場合、③単元未満株主の売渡請求に対し単元未満自己株式を売り渡す場合、④新株予約権の行使に対して会社が自己株式を交付する場合、⑤吸収合併等の際に存続会社等が自己株式を交付する場合などがあります。

新会社法の活用法~機関の設計について~

株式会社の機関もかなり自由に設計できると聞きましたが、どのような機関設計ができるのでしょうか?

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まず、全ての株式会社は、株主総会と取締役(一人または複数)は必ず設置しなければなりません。ですから、一番簡略な株式会社は、株主総会と取締役からなる会社ということになります。これは、現在の有限会社に非常に近い機関設計です。その他の機関、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会の設置は任意です(ただし、会社によっては設置を強制される場合もありますので、それは後で説明します)。
 次に、上記に加えて、取締役会を設置する設計が考えられます。取締役会を設置した場合は、監査役(監査役会を含む)または三委員会等のいずれかを設置しなければならないのが原則です。監査役(監査役会)を設置するのか、三委員会等を設置するのかは、公開会社か否か、大会社か否かという二つの会社概念によって分かれてきます。
 「公開会社」とは、簡単に言うと発行する全ての株式について譲渡制限を設けていない会社です。発行する株式の一部でも譲渡制限を設けているとそれは「公開会社でない会社」ということになります。証券取引所に上場している会社か否かとはまた異なる基準ですので注意して下さい。それと、一般的に株式譲渡制限会社という用語が使われることもありますが、これは発行する全ての株式について譲渡制限を設けている会社のことですから、「公開会社でない会社」とはまた異なる概念です。便宜上、株式譲渡制限会社という用語を使う場合もありますので念のため説明しました。
 「大会社」というのは、最終事業年度に係る貸借対照表に計上した資本金額が5億円以上か、負債の部に計上した額が200億円以上の株式会社をいいます。武田薬品工業とかソニーなどの大企業をイメージしていただければ分かりやすいと思います。そうすると、その基準に満たない会社は「大会社でない会社」ということになります。国内の大部分の株式会社はこちらに該当するわけです。この二つの会社概念は、機関設計はもちろんのこと会社法をみていく上で重要ですので、是非とも頭に入れてください。
話しを戻します。株主総会と取締役、取締役会を設置しますと、原則として監査役(監査役会を含む)か三委員会等のいずれかを設置しなければなないことは既にお話ししたとおりです。ただ、例外的に、「大会社でない会社」で「公開会社でない会社」である場合において、会計参与という会社法で新設された機関を置くときは、監査役(監査役会)や三委員会等を設置しなくてもいいとされています。

株式会社の機関を設計した場合、取締役会の設置は必ずしも必要ではないように思えるのですが、どのような場合でも、会社法上、取締役会の設置は義務ではないのでしょうか?

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会社法は、①公開会社、②監査役会設置会社、委員会設置会社については、取締役会の設置を義務付けています(法327条1項)。

取締役会を設置した場合に、監査役(監査役会)を置くか、三委員会等を置くかの基準は何かありますか?

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監査役を置くか三委員会を置くかは選択的であり、監査役と三委員会を併存させることはできません(法327条4項)。三委員会を置いたときは、会計監査人を置かなければいけません。三委員会を置いた会社を委員会設置会社といいますが、会社法上、委員会設置会社は公開会社であろうとなかろうと、また大会社であろうとなかろうと設立する事が可能です(法2条12号)。もっとも、会計監査人を置くとなると、監査法人や公認会計士に会計監査を依頼しなければなりませんので、大会社でなく、かつ公開会社でない会社が採用することはほとんどないといえると思います。
 次に三委員会を置かない時は、監査役(監査役会)を置かなければなりません。その際、大会社であり、かつ公開会社であれば、監査役はもちろんのこと監査役会、そして会計監査人を設置しなければなりません(法328条1項)。

大会社であって公開会社である会社が採りうる会社形態は分かりました。そうしますと、例えば、大会社ですが、公開会社でない会社も同じなのでしょうか?

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「大会社であって公開会社である会社」と「大会社であって公開会社ではない会社」には、機関設計上、二つ異なる点があります。「大会社であって公開会社ではない会社」では、監査役会を置いても置かなくてもいいことと(法328条参照)、公開会社ではありませんので、取締役会を置かなくてもいいことです(法327条1項1号参照)。
 したがって、「大会社であって公開会社ではない会社」では、①委員会設置会社、②監査役会設置会社に加えまして、③取締役会+監査役+会計監査人の形態、④取締役+監査役+会計監査人の形態が可能となります。

大会社でない会社が採用できる機関設計についてはどうなっていますか?

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 公開会社である場合と公開会社でない場合を分けると分かりやすいです。
 公開会社である場合は、「Q大会社であって公開会社である会社が採りうる会社形態は分かりました。そうしますと、例えば、大会社ですが、公開会社でない会社も同じなのでしょうか?」の①②③の形態を採ることができます。ただし、④は駄目です。というのは、公開会社は取締役会を設置しなければならないからです。
取締役会は必ず置いた上で、監査役(監査役会)を置く必要があり、会計監査人を置くか否かは任意です。従って、①②③に加えて⑤取締役会+監査役会の形態、⑥取締役会+監査役の形態が可能となります。
 公開会社でない会社の場合はさらに増えます。①②③④⑤⑥の設計は可能ですし、さらに取締役会を設置しなくてもいいことから、⑦取締役+監査役、⑧取締役のみの形態が可能です。それから⑨取締役会+会計参与の形態であれば、取締役会を設置するにもかかわらず監査役や三委員会を置かなくてもいいので、これも可能です。
 その他、監査役の権限を会計監査権限のみに限定することもできますので、これも加えるとさらに設計可能な範囲が広がります。
会社法で新設された会計参与は、全会社で任意に設置することができます。設置が強制されるのは、⑨の場合だけです。

民事事件

債務整理

多額の借金を抱えており、月々の返済に困っているのですが、解決するにはどのような方法がありますか。

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借金=債務を整理するには、裁判所を利用せずに相手との交渉で解決する任意整理、裁判所を利用しての特定調停の申立て、個人再生手続の申立て、破産手続の申立てなどさまざまな解決方法があります。
 借金の額、資力の有無など様々な事情を考慮して、最も適切な方法を選択することになります。

訴訟

借りたお金を返してもらうために、裁判手続をとりたいと思います。どのような手続がありますか?

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請求額が140万円以上であれば、地方裁判所に、140万円以下であれば簡易裁判所に訴えを提起することになります。
 簡易裁判所での手続には、通常の裁判手続のほかに、少額訴訟手続、支払督促手続などがあります。裁判所を通じての話し合いによる解決であれば、民事調停、訴え提起前の和解(即決和解)などが考えられます。
 請求額、相手方の態度などに応じて、どの手続が適切なのか、弁護士が適切にアドバイスいたします。

賃貸借関係

敷金とは何ですか?

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敷金とは、契約期間中に賃借人が賃貸人に負担する賃料債務その他一切の債務の担保のために差し入れられた金銭であり、契約終了後に賃借人の債務を控除して残額が返還されるものを言います。
 近年、敷金を巡るトラブルは増加傾向にあります。これまでの裁判例や国土交通省の発行するガイドラインなどを踏まえて適切にアドバイスさせていただきますので、問題が深刻化する前にご相談いただければと思います。

交通事故

労働能力喪失期間については就労可能年数の67歳までの期間が常に認められるのでしょうか。

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常に認められるわけではありません。例えば、いわゆるむち打ち症の場合は、自覚症状を主体とする後遺障害であるため、67歳までの喪失期間を認めず後遺障害等級が14級の場合は2年から5年、12級の場合は5年から10年に限定されることが多いですし、非器質的な精神障害(身体に対する物理的な損傷を直接の原因としない精神障害)については、治癒する可能性があるため、その症状に応じて労働能力喪失期間が限定されることがあります。

労働能力喪失率とはどのようにして算定されるのでしょうか。

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労働能力喪失率は自賠責保険により認定された後遺障害等級ごとにその割合が定められており、通常はその割合どおりの喪失率が認められることになります。例えば両眼の失明は後遺障害等級1級とされており労働能力喪失率は100%であり、いわゆるむちうち症で医学的に説明可能なものは14級とされており労働能力喪失率は5%とされています。

交通事故により残念ながら後遺障害が残ってしまいました。今までやっていた仕事もできなくなり転職しなければならず、給料も減る予定です。この場合、加害者に対してどのような請求ができるのでしょうか。

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後遺症が残ってしまった場合、その分、労働能力が喪失されていると考えられますので、就労可能年齢(67歳)までの期間(労働能力喪失期間)について、労働能力が喪失されていることにより減った収入を逸失利益として損害賠償請求することができます。もっとも、将来得られたであろう給料を現時点で請求するという側面があるので、中間利息が控除された額を請求することになります。具体的な計算式は、「基礎収入(年収)×労働能力喪失率×喪失期間に対応する係数(ライプニッツ係数と呼ばれ、この係数は就労可能期間と中間利息の利率から導かれるものです)」で表すことができます。

交通事故で負った怪我が原因で会社を退職せざるを得なくなりました。怪我は完治する予定ですが、就職までは時間がかかります。この場合、休業損害は請求できるのでしょうか。

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交通事故で負った怪我が原因で退職を余儀なくされたり解雇されたりした場合であっても、実際に労働困難な期間のうち合理的と考えられる期間については、休業損害を請求することは可能です。また就労可能となった後であっても、就職先を探すために時間がかかることがありますが、この場合であっても、実際に就労先が見つかるまでの期間あるいは就職先を得るための必要な相当期間のいずれか短期の期間について休業損害を請求することができます。

交通事故で怪我をして入院が必要となり、入院中は会社を休まざるを得なくなりました。入院中の給料は加害者に対して請求できますか。

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このように入院中に失った収入等は休業損害といい消極損害の典型例として賠償請求することが可能です。請求できる額は一日あたりの給与額(収入日額)を仕事を休まざるを得なくなった日数を掛けあわせて算出するのが一般的であり、収入日額は、ある期間(たとえば事故前3か月)の給与総額を期間の総日数で除して算出することが通常です。

加害者が賠償金を支払わないので仕方なく弁護士に依頼して裁判をすることになりました。この弁護士費用を加害者に請求することはできますか。

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交通事故の被害者から加害者に対する請求の場合は、加害者に対する請求可能金額の1割程度が弁護士費用として加害者に請求することが可能です。保険会社に対する保険金請求、保険会社からの求償請求の場合には弁護士費用を請求することはできません。なお、弁護士費用については加入されている損害賠償保険等に弁護士費用特約が付されている場合があり、その場合は弁護士費用を保険会社が負担してくれますので、確認をしていただくとよいでしょう。

交通事故で負った怪我の通院のために交通費を負担しています。交通費についても加害者に請求することができますか。

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被害者の方が負担した通院のための交通費はその実費を加害者に請求できるのが原則です。もっとも、公共交通機関を使用できるにもかかわらずあえてタクシーを用いた結果、交通費が高額になっているような場合は、電車、バスなどの運賃を上限として交通費の請求ができることになります。また、自家用車の場合はガソリン、高速道路代、駐車場料金等の実費相当額が交通費として請求できます。

入院中に衣類等の諸雑費がかかってしまいましたが、雑費についても自己加害者に請求できますか。

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入院雑費については、入院中にどうしても生じてしまう費用であり、交通事故がなければ負担せずに済んだはずの費用ですので、原則として請求することができます。もっとも、不当に高額になると雑費の必要性が否定されて請求することができません。なお、実務的には入院一日あたり1,400円から1,600円の雑費を一律に認める運用がされており、裁判でも一日あたりにかかる雑費を上記の範囲内の定額で認める運用がされています。

交通事故で負った怪我の治療の一環として鍼灸、マッサージ、リハビリのためにスポーツクラブなどに行きたいのですが、これらの費用も加害者に請求することはできますか。

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鍼灸、マッサージ、スポーツクラブでのリハビリは医療行為ではないので、主治医の指示、承認がなければ基本的には認められません。医師の医療行為以外の症状改善のための費用を支出する場合には事前に医師の判断を仰いでからの方がよいでしょう。

後遺症の診断の後、しばらく通院していたのですが、この間の治療費は請求できるでしょうか。

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後遺症が残ったと診察されるということは、治療してもそれ以上症状が改善しないと判断されたことを意味します。そのため、後遺症の診断を受けた後の治療については不必要な行為として治療費については加害者に請求することは原則できません。しかし、症状の内容、程度、治療の内容によっては症状の悪化を防ぐために治療行為が必要となりその場合は、一定限度で治療費を請求することができる場合があります。

交通事故で負った怪我の具合を正確に知りたくて、セカンドオピニオンを得るために複数の病院で診察を受けたのですが、診察料を事故加害者に請求できますか。

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治療費は原則として実費を請求することが可能ですが治療上の必要性・相当性がない場合は請求できません。裁判例の中にはセカンドオピニオンを得るため、治療を受けている病院以外の2つの病院を受診する程度であれば相当性があるとして賠償を認めた例がある一方で、3ヵ所の病院で治療を受けていた場合に1か所の病院での治療費は認めなかった例もあります。他の病院での診察料が請求できるかどうかはその診察が必要かどうかの判断によるため具体的事情を無視して一律に請求できない、できると決めることはできませんが、診察を受けている病院以外に2か所以上の病院で診察を受ける場合は、請求できない可能性があるということを注意する必要があるでしょう。

自賠責保険とよく言われますがどのようなものなのでしょうか。

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実際に自動車を運転されている方はよくご存じと思いますが、自賠責保険は自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済のことを指します。自賠責保険は、交通事故によって被害者が被った人身損害(物損は含まれないことに注意が必要です)を填補する目的で自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます)5条により義務付けられています。法律により付保が義務付けられているので付保率はほぼ100%です。

交通事故の被害者になってしまったのですが、任意保険を付保していない加害者が賠償金を支払おうとしませんし、何かいい方法がないでしょうか。

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自賠法16条1項は被害者が加害者加入の自賠責保険の保険会社に直接請求する権利を認めています(被害者請求)。この被害者請求の制度は早期の支払(原則30日以内)が図られているため、加害者が賠償金を支払おうとしない場合だけでなく、示談交渉が長引く場合や、早期に賠償金の受け取りが必要な場合に利用するのがよいでしょう。

自賠責保険により損害の全てが填補できるのでしょうか。

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自賠責保険には支払限度額が定められています。傷害事故の場合は上限が120万円、傷害事故で後遺症が残った場合は最大で4,000万円、死亡事故の場合は3,000万円が上限です。もちろん、常に上限額が支給されるわけではなく、治療状況や、後遺障害の程度内容により支給金額は変化します。自賠責保険により填補できない損害については、加害者自身に請求したり、加害者が別途加入している任意保険会社と交渉したりして損害の填補を図ることになります。

交通事故の被害者になってしまったのですが、加害者との話し合いがまとまらず、とりあえず自賠責保険会社に請求を考えています。何か注意しておく点はあるでしょうか。

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大きく分けて二つの点に注意する必要があります。一つは時効の問題、もう一つは支給額の減額の問題です。

(1)時効の問題
被害者から自賠責保険会社に請求する場合は、時効の問題があるので、時効期間以内に請求する必要があります。傷害による損害の請求については事故発生の翌日から2年以内に請求する必要があり、後遺障害による損害については後遺症が確定した日(症状固定日といいます)から3年以内に請求する必要があります(自賠法19条)。3年が経過してしまうと、自賠責保険会社には請求できなくなってしまいます。もっとも、平成22年3月31日までに発生した事故については2年ですので注意が必要です。

(2)支給額の減額の問題
ア 事故が加害者の確定的な故意や悪意によって生じた場合、自賠責保険会社は免責されることになっています(自賠法14条)。従いまして、加害者が意図的に交通事故を起こしたような場合、被害者は自賠責の保険会社には請求できません。
イ また、被害者の過失割合が7割以上(重過失)となると、本来の支給額の2割から5割の減額がされることがあります。ただし、この重過失による減額は、被害者保護の観点から抑制的に運用されているので、被害者の重過失が疑われるような場合でも、とりあえず請求してみるといいでしょう。

加害者が任意保険はおろか自賠責保険に加入しておらず、加害者自身も賠償する資力はないようです。治療費等の請求はあきらめるしかないのでしょうか。

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不運にも交通事故の加害者が自賠責保険に加入していない場合でも、
救済される道はあります。自賠法72条は政府の自動車損害賠償保障
事業を定めており、加害者が自賠責保険に加入していない場合、政府
に損害の填補を請求できるとしています。
この政府の自動車損害賠償保障事業はひき逃げ事案などのように加害者が
特定できない場合でも利用することができます。

交通事故から随分と時間がたってしまいました。損害の賠償はいつまでに求める必要があるのでしょうか。

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原則として交通事故の日(厳密には損害及び加害者を知った日)から3年以内に請求しなければ時効により損害賠償請求権は消滅してしまいます(民法724条)。後遺症がある場合は後遺症の診断を受けた日から3年以内に請求しなければなりません。

交通事故の相手方の運転手の方に損害の賠償を求めたいのですが、資力がないようで賠償できないといわれてしまいました。あきらめるしかないのでしょうか。

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あきらめる必要はありません。事故によって怪我を負っているような場合は、相手自動車の所有者にも賠償を求めることができますし、相手自動車が相手の勤務先の所有車である場合や相手が勤務中に起こした事故の場合は、その勤務先にも賠償を求めることが可能です。

事故によって生じた損害は全額支払ってもらえるものなのでしょうか?

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交通事故は他方が完全に停止しているような場合もありますが、通常は双方が動きながらの生じたものであることが多く、その場合は事故について双方に過失があるということになります。この場合は、生じた損害の賠償を請求しても自らの過失部分について割り引いた金額の請求しか認められないことになります。

慰謝料の基準はあるのでしょうか?

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慰謝料は入院通院期間に応じて一定の基準があります。後遺症がある場合は後遺症の軽重によって慰謝料額が決定されます。入院通院もなく後遺症もない物損事故の場合は原則として慰謝料は認められていません。

将来得ることができたであろう利益(消極損害)にはどのようなものがあるのでしょうか?

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消極損害は休業損害が代表的です。事故により入院するなどして仕事を休まなければならなかった場合には休んだ日数分に得ることができたであろう給料等を休業損害として請求できます。また、後遺症があるような場合は、後遺症の軽重に応じて後遺症逸失利益(後遺症があることにより得ることができなくなった将来の収入)を請求することができます。

積極損害には治療費・修理代金の他にどのようなものがあるのでしょうか?

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代表的なものは治療費や自動車の修理代金ですが、その他にも通院交通費、付添看護費、車椅子や医療器具などが必要になればその費用も積極損害として加害者に請求することができます。

交通事故の被害者になった場合、加害者にはどのような損害の賠償を求めることができますか?

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大きく分けて①治療費・修理代金のような被害者が有している財産を失ったことによる損害(積極損害)、②将来得ることができたであろう利益(消極損害)、③慰謝料の三つが請求できます。

損益相殺とはなんですか。

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交通事故を原因として被害者が利益を受けたときは、その利益を加害者に請求できる損害賠償額から差引かなければならない場合があります。これを損益相殺といいます。損益相殺は被害者が二重の利得をすることは公平の精神に反するため認められます。では、具体的にどのような利益を受ければ損害賠償額から差引く必要があるかを見ていきましょう。

事故で入院していると、加害者が見舞金2万円をもってきたので、受け取りました。これは損益相殺の対象となるのでしょうか。

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香典や見舞金は、加害者及び被害者の関係を考慮の上、明らかに高額である場合を除き、損害額から控除されることはありません。社交上の儀礼として相当な金額の範囲であれば損害額から控除をしないとされています。社交上の儀礼の範囲内か否かは一律には決定されませんが、入院する程の事故で2万円程度であれば、社交上の儀礼の範囲内として損害賠償額から差し引く必要はないと考えられます。

家族が交通事故で亡くなってしまい、生命保険金が相続人である私に支払われました。加害者は、生命保険金は損害賠償金から控除すべきと主張していますが、控除しなければならないのでしょうか。

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生命保険契約に基づいて給付される保険金は、既に支払い済みの保険料の対価の性質を有しますし、もともと不法行為(交通事故)の原因と関係なく支払われるべきものですので、損害賠償額から控除する必要はありません。

事故で入院中は仕事ができませんでした。その間、私は所得補償保険を使って保険金を受け取っています。損害賠償額から控除する必要があるでしょうか。

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所得補償保険は、傷害又は疾病のために発生した就業不能という保険事故により被った実際の損害を填補することを目的とした損害保険の一種というべきであるとして、損害賠償額から控除する必要があると考えられています。残念ながら、受け取った保険金は控除する必要があります。

交通事故で負った怪我が原因で、会社を退職してしまいました。今は、雇用保険の失業等給付を受けています。この給付金は、損害賠償額から控除する必要がありますか。

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雇用保険からの給付については、休業による損害を填補するという性質がないことから、損害額から控除する必要はないとされています。

家事事件

成年後見制度とはどんな制度ですか?

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 成年後見制度は、例えば認知症になられたご老人のように、精神上の障害により判断力が衰えた方の財産管理や身上監護(身の回りの世話)を家庭裁判所の選んだ成年後見人が援助する制度です。ご本人の判断力のレベルにより、成年後見人、保佐人、補助人の制度があります。

成年後見制度はどんなときに利用するのですか?

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ご本人が、自分でその財産を管理したり(例えば、預金の出入金や必要品の購入、契約の締結など)ご自分で身の回りのことができなくなったときに、適切な親族の方や弁護士などを成年後見人に選任してもらいます。ご本人の預金の出入金や、様々な介護サービスの利用契約、施設入所の契約、賃貸借契約などは、本来はご本人が行う必要があり(特にご本人の財産からその費用を出す場合)、親族の方も法律上は第三者であるためできることに限界があります。親族の方や弁護士が成年後見人になれば、ご本人に代わって、それらのことができます。ご本人が詐欺商法の被害に合われた場合には、契約を取り消すこともできます。
 また、最近ご相談が増えていますが、特定の親族の方がご本人の預金等の財産を自分のために使ういわゆる経済的虐待に当たるようなケースは、弁護士を成年後見人に選んでもらい、それをブロックすることが可能になります。

世話をしてくれる親戚が本人の近くにいないのですが、どうしたらよいですか?

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お世話をして貰える親戚がいない、あるいはいても遠方に居住していたり、ご高齢の場合などは、弁護士など法律専門家を成年後見人に選んで貰うのがよいでしょう。選任の申立を依頼した弁護士に引き続き成年後見人になってもらうことも可能です。
 また、ご本人の推定相続人(配偶者や子どもなど)の間で、介護の方針や財産の管理方法について争いが発生しそうなときは、家庭裁判所は、成年後見人に弁護士を選任します。

施設に入らないで自宅で生活を続けたいときも成年後見制度を利用できるのですか?そのときは、日常の細かな金銭管理や食事等の世話はどうするのでしょう?

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介護保険を利用した在宅介護サービスの契約を成年後見人が業者と契約して自宅で生活を続けることが可能です。日常的な金銭管理(日用品の購入等)も、業者によってはやってくれるところがありますし、日常生活自立支援事業を利用する方法もあります。

成年後見制度の手続を利用するためにはどうしたらよいのですか。

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医師の診断書や戸籍謄本など必要書類を整えて家庭裁判所に申立をします。その後、家庭裁判所による調査等がありますが、成年後見人、保佐人、補助人いずれのケースかによって若干その後の手続が異なりますから、まず相談をしていただき、最も適切な方法を選択しましょう。

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