判例・事例

特許権侵害を理由に他社に商品販売をやめさせたい

2012年12月11日 知的財産権:特許・実用新案・意匠・商標・著作権・不正競争防止法


 「特許権侵害」というと、普段あまり馴染みがなく、イメージしにくい
と思いますので、簡単なケースを設定してみましょう。

1 ケースの内容

 X社は、技術開発により特許aを取得し、これを用いて商品Aを開発し、
販売していたところ、競業他社のY社が商品Aと非常によく似た商品Bを
販売していることを知った。商品Bには特許aと同じ技術が使われている
ことが予想される。しかも、商品Bは商品Aよりも単価が安く、消費者が
単価の安い商品Bを購入するため、商品Aの売上げが伸び悩んでいる。
 X社としてはなんとかY社の商品Bの販売をやめさせることはできない
だろうか。

2 X社がY社に対して請求できること

 Y社の商品BがX社の保有する特許aを侵害している場合、X社は、Y社に対して、

商品Bの販売をやめさせること(販売の差止め)、
商品Bの在庫を廃棄させること、
X社の売上げが減少したことによりX社が被った損害の賠償を請求すること、

ができます。

3 X社は何を確認しておく必要があるか

 X社は、Y社に対して上記の請求をする前に、次のことをまず確認して
おく必要があります。

(1) 権利の確認
 最新の特許登録原簿を入手して、特許権が有効に存続していることを
確認します。
 稀に毎年支払う特許の登録料を納付し忘れ、特許権が消滅してしまって
いる場合があるので、注意が必要です。

(2) 特許aの内容の把握
 公開されている特許公報や特許の出願の際に提出した資料、出願手続の
過程を記録した資料(専門用語で「包袋記録」と呼ばれています。)を確認
して、特許aの内容を確認します。
 特許権侵害を主張するためには、まず自社の特許の内容を確認し、相手方
の商品に使われている技術が、自社の特許の範囲に含まれていると言えなけ
ればならないからです。
 これらの資料には、特許技術の内容が専門的な文章で表されているため、
特許の内容を理解するためには弁理士のサポートが不可欠です。

(3) 被疑侵害物件の入手
 Y社の商品Bが市場において入手可能な場合は、現物を購入した上で、その
構造や作用を確認します。購入が困難な場合は、カタログ、取扱説明書等を
入手します。
 そして、商品Bに使われている技術が、X社の特許aの範囲に含まれるかどう
かを検討し、含まれているといえる場合にはY社に対する販売の差止め、在庫
の廃棄、損害賠償等の請求をすることになります。
 もっとも、Y社から、特許aがそもそも無効である等の反論が出されるケース
もあり、Y社に対して、どのようなタイミングで、どのような請求をするのが
最も効果的なのかを慎重に判断する必要のある場合もあります。
 当事務所では、特許に関する案件も扱っておりますので、お気軽にご相談
ください。
                                    以上

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