判例・事例

株主総会決議に瑕疵がある場合の救済方法

2007年7月2日 その他


1 小規模閉鎖会社で経営権を巡って紛争が生じた場合,株主総会決議の瑕疵が争われることが多いです。
  小規模閉鎖会社の株主総会は,会社法が定める手続きを踏んで開かれていないことが多く,株主間で争いがない場合は,そのような不備は表面化しないのですが,ひとたび株主間で争いが生じてしまうと,しばしば経営権を失った株主側から株主総会決議の瑕疵が取り上げられて問題となります。
  会社法は,株主総会決議の瑕疵を争う方法として,決議取消(831条1項),無効確認(830条2項),決議不存在確認(830条1項)の3つの訴訟類型を定めています。
  以下では,それぞれの訴訟類型の特徴をみていきます。

2 決議取消

 ア 決議取消の訴えは、次のような決議取消事由がある場合に、株主、取締役(執行役)、監査役、清算人等が提起できます。
   会社法では、�株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令、定款に違反し、又は著しく不公正なとき、�株主総会等の決議内容が定款に違反するとき、�株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき、に決議取消訴訟ができる旨定められています。
   ただし、招集手続や決議の方法が法令、定款に違反する場合(上記�前段の場合)であっても、違反する事実が重大でなく、決議に影響を及ぼさないときは、請求が棄却されることがあります(裁量棄却)。
 イ 決議取消の訴えは、当該株主総会決議の日から3ヶ月以内にしなければなりません。3ヶ月の期間経過後に当初主張していなかった決議取消事由を追加することもできませんので注意が必要です。
   訴えを提起する裁判所は、株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(専属管轄)。
   認容判決の効力は、当事者間だけでなく第三者に対しても取消の効力が及びます(対世効)。また、当該決議は遡って無効となります。

3 無効確認

 ア 株主総会の決議の内容が法令に法令に違反する場合、決議無効確認の訴えを提起できます。
   当初から無効であるので、原則として、誰からでも、いつでも無効を主張できます。
ただし、確認訴訟ですので、確認の利益がないと訴えは不適法として却下されます。
 イ 訴えを提起する裁判所は、株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(専属管轄)。
   会社を被告とする場合の認容判決の効力は、当事者間だけでなく第三者に対しても取消の効力が及びます(対世効)。

4 不存在確認

 ア 株主総会決議が何らなされていないにも関わらず決議があった旨の議事録が作成されているに過ぎない場合など外形的に決議が全く存在しない場合や、一部の株主だけが集まって決議をした場合など株主総会決議と評価できない場合は、決議不存在確認の訴えを提起できます。
   これも当初からの不存在を確認するので、原則として、誰からでも、いつでも不存在を主張できます。
   ただし、これも確認訴訟ですから、確認の利益がないと訴えは不適法として却下されます
 イ 訴えを提起する裁判所は、株式会社の本店所在地を管轄する地方裁判所です(専属管轄)。
   会社を被告とする場合の認容判決の効力は、当事者間だけでなく第三者に対しても取消の効力が及びます(対世効)。

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