判例・事例

労災認定基準が改正されました!

2023年10月3日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


令和5年9月1日から、心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正されました。
今回は、改正のポイントをご紹介いたします。

1 精神障害の労災認定要件

まず、精神障害が労災として認定されるためには、

①対象疾病を発症していること
②対象疾病の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷(離婚した、家族が死亡した等)及び個体側要因(精神障害の既往歴やアルコール依存状況等)により対象疾病を発病したとは認められないこと

が必要となります。

2 認定基準の改正ポイント

(1)業務による心理的負荷評価表の見直し~カスハラ等の追加~
◎具体的出来事が追加されました!
認定要件②について、強い心理的負荷があったかどうかの評価は、「業務による心理的負荷評価表」(以下「心理的負荷評価表」といいます。)を指標として、実際に発生した具体的出来事を心理的負荷評価表にあてはめて、心理的負荷(ストレス)の強度を判断します。
当該心理的負荷の全体を総合的に評価して「強」と判断される場合には、認定要件②を満たすことになります。
今回、心理的負荷評価表の具体的出来事に新しく
 ・顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた(いわゆるカスタマーハラスメント)
 ・感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した
が追加されました。

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👉ちょこっとワンポイント
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは…
「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とされています(「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)」)。
悪質なクレームから従業員を守るために、相談対応体制の整備などカスハラを想定した事前準備や、実際にカスハラが起こった時のために事案の把握等対策を実施することが望ましいです。
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◎心理的負荷評価表をより明確に!
また、心理的負荷評価表に、パワーハラスメントの6類型全ての具体例、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等を含むことが明記されました。そして、心理的負荷評価表は強度によって「強」「中」「弱」の三段階に区分されていますが、一部の強度しか具体例が示されていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例も明記されました。

(2)精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
既存の精神障害が悪化した場合について…

【改正前】 悪化前おおむね6ヶ月の以内に「特別な出来事」(特に強いストレスとなる出来事:生死にかかわる極度の苦痛を伴う業務上の病気やけがをした等)がなければ業務が原因であると認められない。
             ↓
【改正後】悪化前おおむね6ヶ月の以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときは、悪化した部分について業務が原因であると認める。

(3)医学意見の収集方法を効率化
専門医3名の合議による意見収集が必須な事案について、特に困難なものを除き、専門医1名の意見で決定できるように変更されました。

3 コメント

今回は精神障害の労災認定基準にカスタマーハラスメントが具体的出来事として追加されたこと、またパワーハラスメントの6類型の具体的出来事が明記されたことをご紹介しました。
近年、パワハラ対策が事業主の義務となり、セクハラに対する対策についても強化される等、ハラスメントに対する対応について企業は今までより一層強化することが求められています。今年12月にハラスメントに関するセミナーを当事務所主催で開催予定ですので、是非ご参加ください。
                                               以上

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