判例・事例

引抜行為を理由とする懲戒解雇について単なる転職勧誘を超えた社会的相当性を逸脱したとして有効とした事例(令和2年8月6日大阪地裁判決)

2021年5月10日 解雇に関する事例・判例


1 はじめに
引抜行為がどのような場合に許容されなくなるのかを確認するとともに、実務上の留意点について検討します。

2 事案の概要
不動産の売買・賃貸・仲介等を目的とする会社に勤務していた部長職や店長の地位にあった従業員が同業他社への転職にあたり、従業員合計7名に対して転職勧誘を繰り返していたことにつき、会社が懲戒解雇をしたところ、同解雇の効力が争われた。

3 判決の概要
・引抜行為を行ったのが従業員が部長や店長といった主要な役職についていたこと
・勧誘対象者が7名にものぼり、中には引抜のために労働条件を上乗せし、300万円もの支度金を提示する等した
・勧誘対象者は営業成績が優秀であったと考えられることから、経営に与える影響は大きかった

事等から、従業員がおこなった引抜行為は、単なる転職の勧誘にとどまらない社会的相当性を逸脱行為であるとして、会社の懲戒解雇を有効とした。

4 実務上の留意点
「勧誘行為があれば直ちに違法になるので解雇や損害賠償が可能」と考えることはできません。従業員には職業選択の自由があり、転職の勧誘は原則として許容されます。例外的に社会的相当性を逸脱するような場合には本判決のように解雇(又は損害賠償請求)が許容されます。本判決は引抜を行った従業員が部長等の地位にあったということに加えて、対象者の数や、支度金を準備する等の勧誘の態様、会社の経営に与える影響が重視され、解雇が有効とされている点がポイントです。

                                                   以上

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