判例・事例

仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドラインが公表されました!

2024年5月9日 労働条件に関する事例・判例


経済産業省は、仕事をしながら家族の介護に従事する、いわゆる「ビジネスケアラー」を取り巻く諸課題の対応として、企業が仕事と介護の両立支援に取り組むことを促すために企業経営者向けのガイドライン(以下「本ガイドライン」といいます。)を公表しました。
今回は本ガイドラインのポイントをご紹介します。

1 企業が仕事と介護の両立支援のためにできること

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本ガイドラインによると、仕事と介護の両立支援という観点において、企業には、法律上義務付けられた措置を講ずることを前提に、従業員が活用できる制度やサービス等に関する情報提供を通じてリテラシーを高める役割が求められます。
そして、従業員がそれぞれの置かれている状況に応じた適切なサービスにアクセスし、必要な支援を選択できることが期待されます。
そうした役割を果たすうえで、全ての企業が取り組むべき事項として以下でご紹介する3つのステップが必要となります。

2 ステップ1~経営層のコミットメント~
✅経営者自身が知る
まずは、経営者自身が「介護」について行政機関のパンフレットや書籍等で具体的に従業員に何が起こっているのかを把握する必要があります。
その上で、自社の規模や業種等を踏まえて仕事と介護の両立が困難になった場合、また両立が達成された場合の企業活動への影響の可能性を認識しておく必要があります。

✅経営者からのメッセージ発信
経営者から従業員等に対して、両立支援推進のメッセージを発信します。
トップ自らが先導することによって、職場全体で仕事と介護の両立を支援する環境や雰囲気が形成されることが期待されます。

✅推進体制の整備
担当役員の設置や担当者の指名を行います。

3 ステップ2~実態の把握と対応~
✅アンケート・聴取
従業員の現在や将来的な介護発生の状況・可能性、被介護者の要介護度や同居の有無をプライバシーに配慮しながら把握しておく必要があります。

✅人材戦略の具体化
アンケートを踏まえて、介護に直面した従業員が最大限活躍できるように整備を進めることが必要です。

✅適切な座標の設定
定量的に計測可能な指標、例えば従業員や管理職への研修実施率、社内での仕事と介護の実態に関する調査実施頻度等を適切に設定する必要があります。

4 ステップ3~情報発信~
✅基礎情報の提供
仕事と介護の両立について、自社で独自にパンフレットを作成したり、自治体や省庁が提供する資料を活用して従業員に情報を提供する必要があります。その際、金銭的な備えに関する情報発信を行うことも重要です。

✅研修の実施
介護に直面する従業員だけではなく、その上司に当たる管理職層に対しての研修も重要です。

✅相談先の明示
従業員が仕事と介護の両立について相談できる先やプロセスなどを明示しておくことが必要です。このような相談先は、ステップ1での仕事と介護の両立に関する推進体制を整備する中で規定・設置し、従業員に対して発信しておくことが望ましいです。

5 コメント
今回ご紹介した内容は、全企業が取り組むべき事項についてでしたが、本ガイドラインでは企業の実情に合わせて独自の取組を行うことも検討することが望ましいとされています。
従業員の仕事と介護の両立が困難になることは、仕事のパフォーマンスへの影響も大きく、従業員個人だけの問題にとどまりません。従業員・企業全体の成長を目指して取り組むことが望まれます。
なお、育児・介護が困難となる労働者につき配慮を欠いた配転命令は、無効とされるリスクがあります。社内制度や環境の整備にお困りの際にはご相談ください。
                                               以上

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