判例・事例

「パワハラ」に関する最近の裁判例③

2016年3月1日 セクハラ・パワハラ等に関する事例・判例


4 アークレイファクトリー事件(大津地判平24・10・30)

【事案の概要】

上司である正社員Fらが、①派遣労働者Xに対し、プログラムを変更しておくよう指示をしたにもかかわらず、Xが変更せずに作業を継続していたことから、「殺すぞ。」などと発言した上、Xの車に損傷を加える旨の言動をしたこと、また②Xが機械にこぼした洗剤の拭き取りが不十分であったことから、機械に腐食が生じたことに関して、Xに対し、「殺すぞ。」「あほ。」などと発言したこと等が問題となった事案。

【裁判所の判断】

正社員でありXを含む派遣労働者を指示・監督する立場にあるFは、指揮命令下にある部下に対する言動において、その人格を軽蔑、軽視するものと受け取られかねないよう留意し、特に、派遣労働者という、直接的な雇用関係がなく、派遣先の上司からの発言に対して、容易に反論することは困難であり、弱い立場にある者に対しては、その立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、安易で、うかつな言動を慎むべきところ、Fらの上記各言動は、いずれも、その配慮を極めて欠いた言動で、客観的には、反論が困難で、弱い立場にあるX(の人格)をいたぶる(軽蔑、軽視する)意図を有する言動と推認でき、その程度も、部下に対する指導、教育、注意といった視点から、社会通念上、許容される相当な限度を超える違法なものである。

→Fらの不法行為を認めた上、会社の使用者責任を認めた(会社が、Fらに対し、Xを含む派遣労働者に対する言葉遣いについて、指導、注意及び教育を行っていなかったことから、免責を認めなかった)。賠償額:合計88万円(控訴審は33万円に減額)

【教訓】

  3と同様、同じ言葉であっても、相手の属性(派遣労働者等)に応じ、より厳しく判断され得ることに注意する必要があります。また使用者としては、管理する立場の社員に対し、パート・派遣社員等に対する接し方を研修などにより指導・教育すべきでしょう

 

5 最後に

いかがでしたでしょうか。特に2の裁判例などは、厳しいと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

パワーハラスメントにより、被害者が精神疾患にり患したり、自殺に至ってしまった場合には、取り返しがつきませんし、多額の賠償債務を負うなど、会社の企業経営上も重大な影響が生じます。今一度パワーハラスメント防止の重要性をご確認いただき、社内でも研修等パワーハラスメントの防止のための施策を実施していただければ、と存じます。

なお、当事務所でも研修の講師等を承っておりますので、もしご希望があればお気軽にご連絡ください。

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